2018年11月19日月曜日

米国の中間選挙について

 ・アメリカの中間選挙は四年ごとの大統領選の間に行われる。いつもさほどの関心もなく見過ごしてきたが、今度は違った。日本のメディアが事前から盛んに報道していたせいもあるが、トランプ批判の票が増えて欲しいという気持ちも強かった。何しろ彼の掲げる政策や、ツイッターでの発言に、世界中が混乱させられてきているからだ。ただし、報道機関の世論調査では、下院は民主党が増えて過半数を占めるが、上院は共和党が勝つだろうというものだった。

・アメリカの議会は上下両院に分かれていて、上院の定数は100議席で任期は6年、人口に関係なく各州二人ずつで、2年おきに三分の一ずつ改選をする。他方下院は定数435議席で、各州の人口比に応じて区割りが行われ、2年ごとに全員が改選される。人口の少ない7州では定数1で、カリフォルニア州は53と、地域差が大きいが、配分は10年に一度の国勢調査に基づいている。

・アメリカの議会について改めて調べてみて、日本との違いに気づかされた。まず、人口比からいって日本の議員の数が多すぎるという点だ。上院の100に比べて参議院は242だが、上院のように各都道府県を一律で2にすれば、定数は92になる。参議院無用論もあるが、少なくても数を減らして独自性を持たせるぐらいは必要だと思った。また下院については、選挙区の区割りが各州に任されているのも衆議院とは違っている。10年ごとに行われる区割りの調整について権限を持つのは州知事であって、下院ではない。自分のことは自分では決められないのだから、日本でも国会ではなく知事に任せたらいいと思った。

・前置きが長すぎたが、選挙の結果は事前の予測通り上院が共和党で下院が民主党の勝利だった。もっともすべての議席が未だに確定していないし、勝ったと言っても共和党は51議席で過半数をわずか1つ超えているに過ぎない。しかも今回の改選35議席のうち、共和党は9議席だけで、勝ったのも同じ9議席だったのである。確定していない3議席を除いて、共和党は9勝23敗で民主党に負けている、トランプが宣言した大勝利や、多くのメディアが言う勝利や善戦は、単に過半数を保った点に注目したに過ぎないのである。

・他方で下院は民主党の圧勝と言えるものである。ここでもまだ議席数は確定していないが、民主と共和はそれぞれ225対201で、民主党は議席を32増やしている。しかもその内訳は、女性が100名を超えたこと、イスラム教徒や先住民、そしてソマリア難民などが初めて含まれていることなど、きわめて多様な新しい顔ぶれになっている。マイケル・ムーアが『華氏119』で取りあげた候補者の多くが当選したことをみても、トランプ批判の票がずい分多かったことは間違いない。とりわけ目立つのは女性や若者の投票率が増えて、その多くが民主党に票を投じたことだろう。

・そこには、前回の大統領選の予備選挙で善戦したバーニー・サンダースの影響が強いと言われている。トランプがつぶそうとしているオバマ・ケア(医療保険)を維持し、さらに充実させようと訴えたし、トランプの移民政策にも強く反対し、また州立大学の授業料の無償化などを主張した。これでは共和党と民主党の対立が激化し、さらに民主党内でも分裂が起こるだろうなどと言われている。トランプがますます強硬になって、アメリカの政治がさらに混迷すると危惧する人も多い。しかし、大事なのは、トランプが突き進めようとする政策に待ったをかける勢力が増えたという点にこそある。そのための対立なら、むしろ歓迎すべきことだろうと思う。

・こんな感想を持ちながら、日本の現状に目を向けると、ほとんど同類の安部首相に対して、なぜもっと強い批判が起こらないのかという疑問である。森加計問題は税金の私的な流用だし、防衛費の増加はトランプの言いなりで買わされた兵器のためだし、消費税を上げるのは大企業への税金を減らしたり、金持ちに対する優遇税制のためである。こんな政策は将来に大きな影響をもたらすから、若い人ほど関心をもって反対すべきなのに、知らん顔を決め込んでいる。日本とは何の関係もないハロウィンで浮かれている場合ではないはずである。

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