2018年11月12日月曜日

最後のジョーン・バエズ

 

"Whistle Down The Wind"
"75TH BIRTHDAY CELEBRATION"

baez2.jpg・ジョーン・バエズが引退するというニュースを見つけた。おそらく最後になるアルバムを出して、今ツアー中だという。アルバムのタイトルは"Whistle down the wind"で、トム・ウェイツの持ち歌だ。ずっと暮らしてきた土地から出ようと思う気持ちと、離れることへの恐れを歌ったもので、今の彼女の心境をあらわしているのかと思った。

・このアルバムに収められている歌に彼女の自作はない。そう、バエズはシンガー・ソング・ライターではなく、彼女の心に触れた歌を世に広める役割をしてきた人だった。その典型はボブ・ディランの歌だろう。実際、もっとも有名とされる「風に吹かれて」も「時代は変わる」も、ディランではなくバエズの歌の方がずっとポピュラーだった。もちろん、「ドナドナ」のような埋もれてしまっていた伝承歌に光も当ててきて、多くのヒット曲を創り出してきた。そんなふうにして、半世紀以上もの間、ずっと歌い続けてきて、引退をするのだという。77歳になって、望むような声が出なくなったことが理由のようだ。

・アルバムを聴いていると、確かに、声がかすれている。しかし、以前のような澄んだ高音よりは魅力的に聞こえた。ぼくは彼女のアルバムは一枚ももっていなかった。それは彼女の歌のほとんどが誰かのカバーだということと、誰の歌であっても、綺麗な歌に変えてしまうことに反感すら感じてしまっていたからだった。

baez1.jpg・アマゾンには他に2年前に出た75歳の誕生日に行われたコンサートのライブ盤があって、多くのゲストが出ているから一緒に購入した。ジャクソン・ブラウン、エミルー・ハリス、ポール・サイモン、ジュディ・コリンズの他にダミアン・ライスなどの若いミュージシャンも登場している。客席にはハリー・ベラフォンテなどもいたようだ。ここでも彼女の歌うのは参加した人の歌はもちろん、ディランなどのカバーや伝承歌だった。自分に歌が作れないことに悩み、嫉妬したこともあったのだろうが、彼女は他の人にはできない大事な役割をはたしてきた。一緒についているDVDを見ながら、そんなことを思った。

・ジョーン・バエズはヴェトナム戦争や黒人差別に反対して歌い、行動もしてきた。その姿勢はずっと一貫していて、最近でも「LGBT」や「#me too」、あるいは貧富の格差の広がりなどについて発言している。ピート・シーガーに憧れて歌い始めたのだが、その歩いた道程もまた、シーガーに重なるものだった。オバマが大統領に就任した時、シーガーはワシントンに集まった人たちの前で歌ったが、その時彼は89歳だった。彼女は現在、最後のコンサート・ツアーをやっていて、その姿はYouTubeで見ても元気のようだ。おそらくこれからも、機会があれば出てきて歌うことがあるのではないかと思う。

・75歳の誕生日ということで検索したらジョニ・ミッチェルの誕生日を祝うコンサートがロサンジェルスで今月の6日と7日に開かれたというニュースを見つけた。モルジェロンズ病という難病を患っている。最近は公の場にも登場しているようで、このコンサートにも顔を出したのかもしれない。ここでもクリス・クリスファーソン、ジェームズ・テイラー、エミルー・ハリス、そしてノラ・ジョーンズなどが出ている。ミュージシャンの繋がりの強さを感じたが、そこにはまた、昔懐かしさではなく、政治や社会に抗議して立ち向かう姿勢も健在だ。その姿勢やスタイルがまた、トランプを批判する若い人たちに受け継がれている。フォークソングが持つ大事な一面だと、改めて思った。

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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。