Mark Knopfler "Down The Road Wherever"
Tom Waits "Closing Time"
・最近、CDをほとんど買わなくなった。大学を辞めて研究費で買えなくなったというのは一昨年のことで、そこから良く吟味してから買うことになったのだが、そもそも気になる新譜が滅多に出なくなった。ぼくがつきあってきたミュージシャンがみんな歳を取ったということもあるし、若いミュージシャンについてアンテナが効かなくなったということもあるのだろう。あるいは、新作発表としてCDを使わなくなったのかもしれないとも思う。いずれにしても、このコラムに取りあげるものがなくて、どうしようかと悩むことが多くなった。コンサートにも3年近く行っていない。
・アマゾンが新譜やあなたに勧めるCDといってメールを送ってくる。しかし、その多くはすでに持っているものだったり、気をそそられるものがほとんどなかったりする。ぼくの好みはデータによって分かっているはずなのに、まったく当てにならないから、ビッグデータもいい加減なものだと言いたくなる。しかしその中で久しぶりに気になるものがあった。
・一つはマーク・ノップラーの新譜だ。ノップラーは精力的に活動しているミュージシャンだ。このコラムでも16年に"Altamira" 、15年に "Tracker"、そして13年に"Privateering"を紹介している。スコットランドのグラスゴー出身で、母親がアイルランド人ということもあって、彼の音楽にはケルトを感じさせるものが少なくないが、今回はちょっと違っていた。「新しく試みたスローでエレガントな歌のコレクション」というのがノップラー自身の狙いだったようだ。アルバムタイトルは「どこであろうとこの道をくだろう」といった意味だろうか。同名の曲はないが、どの曲も息せき切って駆け上がるものではなく、静かにくだっていく感じだ。中身は過去を振り返るものが多い。
・もう一枚はトム・ウェイツの "Closing Time"だが、これは新譜ではない。1973年に発表されたものだから、もう45年も前のものになる。持っていないのに, デビューアルバムだと言うことと、評価が高いから買うことにした。聞き慣れただみ声とはちょっと違い、ピアノだけで静かに歌っている。「酔いどれ詩人」などと形容され、チンピラか用心棒のような風貌が特徴的だった時とは大違いだ。ジャケットに映っているトムは、痩せていて、ピアノの前で悩みを抱えるようにうつむいている。歌も孤独をテーマにしたものが多い。ヒットとはならなかったようだが、今聴いてみると、彼のまた別の一面が感じられた気がした。
・そう言えば、パートナーのキャスリン・ブレナンとの共作で何枚ものアルバムを作ってきたが、2011年の"Bad as Me"以来、しばらくなりを潜めている。精力的にライブ活動をやっているマーク・ノップラーとは違い、ライブもしていないようだ。
・もっとも昨年コーエン兄弟が監督した『バスターのバラッド』には出演しているようだ。六つの話で構成されるオムニバス映画で、トムが出ているのは第四話の「金の谷」だという。山奥で砂金を掘る老山師が鉱床を掘り当てて、それを独り占めにしようとした若い男を殺す話のようだ。画像で見る限りではすっかり老けている。オフィシャルサイトを見ると、劇場公開はなしでNetflixで独占配信しているようだ。見たいけれども、ちょっとためらっている。ともあれ元気なようだから、そのうちまた新しいアルバムを発表してくれるかもしれない。
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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。