2022年4月11日月曜日

Stingの新譜 "The Bridge" と 'Russians'

 
sting1.jpg"スティングの新譜は5年ぶりだ。前作の『57th & 9th』はニューヨークの通り名をタイトルにしたもので、久しぶりにロックのアルバムだった。『The Bridge』のサウンドにはバラエティがある。すべての歌が新しく作られたもののようだが、何かに似ていると感じさせるものが少なくない。もちろんどれもスティングらしくてなかなかいい。

『The Bridge』はコロナ禍のなかでリモートによるセッションで作られたという。会議や講義だけでなく、レコーディングもリモートでできるのかと、再認識させられた。離れたままの人たちを繋ぐ「橋」という発想が生まれたのは、そんな作業の中からだったのだろうか。離れたところにいて、一つの曲、一つのアルバム作りをする。そんなふうにしてできた「橋」には次のようなフレーズがある。

あそこに橋があると言う人がいる
霧の中のあそこだと
嘘だと言う人もいるし
あるはずがないと言う人もいる
………
しかし橋は心の奥深くにある
………
門を開けて渡ることのできる橋を架けよう
メイン・テーマは「橋」のようだが、曲としては「愛」と名のついたものが3つある。愛することの難しさが物語られているが、それは男女の恋愛にかぎらず、コロナ禍の分断はもちろん、荒んだ町に対するものであったり、国境におけるものだったりする。「愛」は離れたものを繋ぐ「橋」になるが、また繋がりを壊す凶器にもなる。人は分離されていると感じれば、それを結ぶ「橋」をかけたがるが、繋がっているものを分断させたりもする。「橋」はそんな人間の心理を喩えるものとして良く使われてきたが、今はまさに、そのことが切実に語られる時代なのかもしれない。

ロシアのウクライナ侵略で、とんでもない蛮行が繰り返されている。子どもたちが避難する劇場や、人びとが集まる駅にミサイルやクラスター爆弾が撃ち込まれたり、民間人への拷問や虐殺が多数報道されたりするのに直面すると、戦争がいかに人間を狂気に陥らせるかを改めて実感させられる。プーチンはウクライナのネオナチが、ウクライナに住むロシア人を殺してきたからだというが、そんな理由は、決して正当化できるものではない。独立した国であるウクライナを「大ロシア」として統合したいという野望は、悪魔の夢想でしかない。スティングはそんな思いを込めて、デビュー時に作った 'Russians' を歌って、YouTubeに公開した。
ロシア人だって子どもを愛すると思いたい
そういう私を信じて欲しい
私やあなた、私たちを救うのは
ロシア人もまた、子ども愛しているかどうかにかかっている
米ソの冷戦時代の対立を批判して1985年作られた歌だが、世界中の人たちが抱く思いを直接訴えることばだと思う。

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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。