2026年3月2日月曜日

選挙報道とオリンピック中継

2週間のオリンピック期間中のテレビはひどかった。早朝から夜中まで、ということは一日中オリンピック競技のライブ中継や録画の放送をしていたからだ。だから見るものがほとんどない。わずかな救いはイタリア各地を紹介する番組があったことだった。これほどのオリンピック偏重はこれまでで一番だったのではないかと思う。そう言えばパリ五輪の時にも、この欄で同じようなことを書いたから、この後もますますひどくなるのかもしれない。

日本選手は24個というこれまでで最高の成績で、すごいすごいと持ち上げる報道ばかりが目立っている。しかし、競技種目がどんどん増えているのだから、増えるのは当たり前だし、金5個のうちスケボーだけが4個なのだから、他の種目はどうなんだと言いたくなってしまう。主たる競技のアルペンでは下位に沈む選手ばかりだったし、スピードスケートも高木選手一人の活躍だった。唯一の例外はフィギアーで、りくりゅうの活躍に大騒ぎでうんざりするほどだった。

そんな日本選手のメダル数に乗じて、また札幌五輪をなどと元オリンピックオタクの国会議員が言い始めている。東京オリンピックの失敗でも懲りないのだから、もういい加減にしろと言いたい。そもそも東京オリンピックにどれほどのお金がかかったのか、いまだに明らかにされていないのである。日本がいまだに経済大国だと勘違いして、お金はいくらでも使えると思っているのだろうか。

ところで、その前にあった衆議院選挙期間中の報道では、テレビはほとんど沈黙状態だった。事前には高市首相の唐突な解散宣言や、それに対応した中道改革連合の成立など、それなりの報道もあったのにである。で選挙当日の開票速報ではまた大盛り上がりで、自民圧勝の結果を無批判に取り上げるばかりだった。いろいろ問題山積みなのに、その点を強く指摘する報道はほとんどなかったのである。アイドルのファン気質に使われていた「推し活」なることばが、高市人気の理由に挙げられて、日本の深刻な現状などはそっちのけになってしまった。

中国が真綿で首を締めるように、輸出品の規制を強めている。レアアースは日本の産業にとって命取りになるかもしれないし、抗生物質などほぼ100%中国に依存しているものもあるのに、高市は知らん顔である。突っ張る姿勢を評価するなどは論外なのである。逆にトランプにはしっぽを振ってなつくだけである。関税が最高裁で憲法違反の判決が出て、新たな関税を設けているが、これについて批判することなど考えてもいないだろう。こういったことについて、正面から疑問を投げかけ批判をするメディアはテレビはもちろん新聞にもない。

批判が消えたのは統一教会や裏金と関係した議員に対しても同様だ。今度の選挙でほとんどが当選したから、みそぎは済んだとまた大きな顔をするのだと思う。野党が激減した国会でも、様々な問題を指摘して紛糾などということは起こらないに違いない。高市政権の政策は安部の焼き直しだから、失われた30年が40年になるだけだろう。それでも高市の発言は、掛け声だけは勇ましいから、何か良い方向に変えてくれると期待しているのかもしれない。しかしそれは淡い期待に過ぎないし、それどころか、とんでもない悪夢の現実化の危険性を孕んでいるのである。

ひょっとすると高市支持の中には、日本の崩壊を望む声もあるのかもしれない。とことんダメになったところから出直したらいい。それはそれで一つの展望なのかと思わないでもない。しかしそうなった時の混乱や困窮をどこまで自覚しているのだろうか。

目次 2026

 

3月

2日 選挙報道とオリンピック中継

2月

23日 パティ・スミス『ジャスト・キッズ』河出書房新社

16日 Bob Dylan "Shadow Kingdom" Patti Smith "Horses"

9日 ドジャースの戦力補強に違和感

2日 厳寒のお粗末選挙にうんざりだ!

1月

26日 ケヤキと格闘中です

19日 久米宏とテレビの終わり

12日 黒川創・滝口夕美編『加藤典洋とは何者だったか?』SURE

5日 ニール・ヤングの反トランプ宣言

1日 今年もよろしくです

2026年2月23日月曜日

パティ・スミス『ジャスト・キッズ』河出書房新社

paty8.jpg この本は2012年に発売されている。もう12年も経っているが、ずっと本棚で眠っていた。次に書評する本がなくて何となく手にして読みはじめたら、面白くて夢中になった。で、読み終わったところでパティ・スミスのデビュー・アルバムが50周年記念で再発売されたことを知った。奇遇だが、そんなわけで、2週続けてのパティ・スミスである。

『ジャスト・キッズ』は子ども時代からデビュー時までの彼女自身の回想録である。ニューヨーク・パンクの女王などと言われたが、ここに登場するのは、どちらかと言えばシャイで目立ちたがりやではなく、それほど突っ張っているわけでもない素顔の彼女である。モダンジャズ好きの父親に敬意を払い、優しい母親に甘える一面もある。子どもの時には妹や弟と遊んだが、その関係は大きくなっても続いている。本を読むのが好きで良く詩も書いていた。そんな彼女が家を出てニューヨークに住むきっかけになったのは、思いがけない妊娠と出産だった。

産まれた子どもは養子として託し、カレッジを中退して、アルバイトの仕事をし、大したあてもないのにニューヨークに行くことを決心した。知り合いのところに居候をしたり、時に野宿もして、ウェイトレスの仕事を見つけてもすぐに首になったりした。ロバート・メイプルソープと出会ったのは、本屋の仕事を見つけてしばらく経った頃だった。

ロバートとパティは一緒にドローイングを描き、住んでいる部屋に貼りつけたり、安い小物や拾ったものを使った作品を作った。彼はやがてカメラに興味を持ってアバンギャルドな写真家をめざすが、パティもまた詩を書いて朗読会で発表したりするようになる。チェルシー・ホテルに住むようになると、多くの作家や詩人、あるいはミュージシャンとも親しくなって、二人の存在も認められるようになった。

二人の仲に変化が現れたのはロバートがホモセクシャルな関係に目覚めたことが原因だった。しかし、恋人関係ではなくなっても、一緒に制作をしたり、互いの作品を認めあったりする関係は続いた。ロバートの才能を誰よりも信じて評価をしていたパティは、彼が脚光を浴びることを願ったが、注目を集めるようになったのは彼女自身の方が先だった。詩の朗読にギターやピアノのバックをつけたところから、やがて歌うようになり、ドラムを加えてロックバンドになる。29歳のデビューだから、ニューヨークに来てから8年ほどの時間が経っていた。

デビュー・アルバムのジャケットはまるで少年のような風貌のパティだが、それを撮ったのはロバートである。その後のアルバムにも彼の撮った写真が使われているが、彼はエイズで長期間苦しみ1989年に亡くなった。パティもまた結婚を機に活動を休止していたが、夫のフレッドと共作した 『ドリーム・オブ・ライフ』で88年に復活した。その間彼女はデトロイトに住み、時折ニューヨークのロバートを訪ねて彼を励ましている。そんな意味で、この本は彼女自身ではなくロバートとの二人の物語として読めるものだった。

2026年2月16日月曜日

Bob Dylan "Shadow Kingdom" Patti Smith "Horses"

dylan15.jpg 本当に久しぶりにCDを買った。ボブ・ディランの"Shadow Kingdom"は2021年に発売されたもので今まで気づかなかった。コロナ禍でコンサートができなくなった代わりにネットでライブ映像として配信されたもののようだ。曲目は初期の作品が多く、映画の『名もなき者』に似ているが、歌い方はずいぶん違っている。激しくではなく、穏やかで軽やかだ。シナトラやシャンソンを歌った時のような感じで、自分の持ち歌をアレンジし直している。

ディランは85歳になるが、今年ももちろん「ネバー・エンディング・ツアー」を続けている。さすがに新しい歌を集めたアルバムは5年ほど出ていないが、コンサートは死ぬまで続けるつもりなのかもしれない。古い歌でも新しいアレンジで歌い演奏する。その創造力には感心するばかりだ。

ところで肝心のライブ映像だが、YouTubeでは’Forever Young'しか見ることができない。DVDも手に入りにくいようだ。照明が暗く、タバコの煙が立ちこめる小さなクラブでのパフォーマンスだが、音と映像が合っていなかったりする。場所も曲によって違うようで、コンサートそのものではなく、ライブに見立てた作品といった趣向のようだ。

patti7.jpg パティ・スミスの "Horses" はデビュー・アルバムだが、その50周年を記念して再発売したものだ。僕はレコードでしか持っていなかったから買ったが、いくつか曲が追加されている。ニューヨーク・パンクの新星として登場してから半世紀も経ったのだが、このアルバムを最初に聞いた時の新鮮な印象は今でも覚えている。思えばこの時期にはパンクやレゲーといった新しい波が次々にやって来て、ルー・リードやスティング、あるいはジャクソン・ブラウン、やジェームス・テイラーといった若いミュージシャンがたくさん登場してきていた。

パティのデビューは29歳で遅咲きだが、それ以前にはむしろ詩人として知られていた。自作の詩を朗読する際にギターやピアノをバックにつけることから始まって、やがて歌うようになり、ドラムも加えた激しいパフォーマンスになった。そんな過程もまた独特で面白いと思った。だから、彼女の歌には歌うよりも語る、あるいは叫ぶといった場面が多い。

アルバム・ジャケットのパティは当然、29歳のものだが、最近の画像を見ると長い白髪姿の魔法使いのおばあさんのようだ。しかし、デビュー・アルバムの歌を最近でも歌っていて、その様子は50年前と変わらないほど溌剌としている。50周年に合わせて回顧録も発売されたようだが、彼女のデビューまでについてはすでに『ジャスト・キッズ』という回想録がある。実は偶然ちょっと前に読んでいて、次回ではその紹介をするつもりだった。

2026年2月9日月曜日

ドジャースの戦力補強に違和感

2月になって、もうすぐキャンプが始まります。今年はWBCですから、もうすぐにぎやかになるでしょう。WBCを見るためにNetFlixに加入するかどうかはまだ決めていません。月額890円ですから直前になって判断しようと思っています。当然、日本は連覇を狙っていますが、アメリカもドミニカも本気で戦力を整えてきています。さてどうなるでしょうか。

今年のドジャースですが、当然地区優勝は堅く、リーグ優勝も本命です。うまくいけばワールド・シリーズ3連覇も可能で楽しみだと言いたいところですが、オフの戦力補強には首をかしげることが多かったです。2連覇して最強の軍団なのに、外野とリリーフが穴だと言われ、あいつをとれ、こいつがいいといった記事が連日取りざたされました。しかしさっぱり動かないので、僕は現有勢力で来シーズンも行くのだろうと思いました。期待外れだった選手が復活するかもしれませんし、マイナーにいる若手の成長も期待できるのです。

ドジャースには有望な若手がたくさんいます。しかし、トレードやFAで補強を繰り返しているので、なかなかメジャーに上がってこられません。そんな選手が他球団にトレードされて、それなりに活躍しているのを見ると、出さずにチームの戦力にした方がいいのでは、と何度も思いました。何しろドジャースの一番の欠点はチームの高齢化で、20代のレギュラー選手は外野のパヘスしかいないのです。すぐに結果が出なくても我慢して使い続けることをしなければ若手は成長できません。パヘスは例外的に我慢して使って実力を出しはじめた選手なのです。

ドジャースはすでに選手に支払う年俸がメジャートップで莫大な贅沢税を払っています。今シーズンの終了後には選手会とオーナーが結んでいる労使協定が失効して改訂をしなければなりません。年俸のチーム上限を定めるサラリーキャップ制の導入をオーナー達が主張すれば、選手会と対立してストとロックアウトでシーズンが始まらないのではと心配されています。25年度の贅沢税を払ったのは9チームで全体の3割でした。財政豊かな球団はそんなことお構いなしにこのオフも戦力補強に多額のお金を費やしました。

ドジャースは結局、クローザーのエドウィン・ディアスと外野手のカイル・タッカーを取りました。ディアスは3年で6900万ドル、タッカーは4年で2億400万ドルの超高額契約でした。これで弱点と言われたリリーフと外野を補強したわけで、まさに悪の帝国といわれても仕方がないのだと思います。大谷との契約以降、ドジャースの収入は爆上がりしていますから、財政的には何の問題もないのでしょう。しかしリーグでの不均衡なチーム力は大きくなるばかりですから、他球団にとっては戦う前からギブアップということにもなりかねません。

選手は生身の身体ですから故障やスランプで期待外れといったこともおこるでしょう。実際去年も一昨年も、ドジャースはそんな選手たちに悩まされました。だからこその補強なのですが、毎年あまりに露骨にやっているので、もうドジャースを応援するのはやめようかと思うようになりました。大谷や山本や佐々木の応援はするけれども、ドジャースの応援はしたくない。そんなことができるのかどうか、何とも悩ましいかぎりです。

2026年2月2日月曜日

厳寒のお粗末選挙にうんざりだ!

厳寒の中、唐突な衆議院選挙である。高市首相は私を選ぶかどうかの信任選挙だといった。意味が分からないが、選挙情勢では自民単独過半数の勢いだと言う。本当の解散理由は何なのか。統一教会の問題が韓国で裁判になっていて、その資料が公開された。そこには安部や萩生田をはじめ自民党議員の名前が数多く登場し、高市の名もあると言う。国会で追求されたらとんでもないことになるのは明らかだった。あるいは維新の国保逃れの問題もあって、身を切るどころか身を肥やすことに腐心していたのだから、これも問題にされたくなかった。などなど、国会を開いたらやばいと思われることが目白押しだったのである。

来年度予算が可決し、国会が終わってからの選挙と言われていたが、それでは高市人気は下落して、選挙ではとても勝てなくなってしまう。首相にはそんな危機感があったのではと言われている。実際選挙に入ると、統一教会も国保も、あまり話題にならなくなった。で、公明と立憲が合体して「中道改革連合」になったとは言え、高市政権は安泰だろうと言うのが、大方の選挙情勢である。高市首相は信任されたら国論を二分するような政策を行うから、その白紙委任が欲しいと言っている。その中身については何も語らないから危ないことこの上ないが、それでもいいと思っている人が多いのだから、こんな恐ろしい選挙はないだろうと思う。

国論を二分するような政策とは何なのか。それはたとえば非核三原則の改訂で核兵器を所有できるようにするのではと言われている。それを使うためには原子力潜水艦が必要だが、その建造も狙っているのかもしれない。それらを含めて防衛費をGDPの2%ではなく3.5%に増額し、さらにアメリカの言うがままに5%にもすることまでやろうと思っているのだろうか。そのための予算は税金や国債に頼るのだが、日本の経済は破綻してしまうにちがいない。彼女の言う積極財政は安部政権時の経済政策で失敗が明らかなアベノミクスの焼き直しにすぎないのである。

ベネズエラの大統領を拉致しグリーンランドをよこせと息巻いているトランプ米大統領は、中国に対しては極めて弱腰だ。西半球の支配は譲れないが東は勝手にやってくれ。そんなことを言い始めている。つまり台湾有事にアメリカ軍が出る可能性はないと言っているわけで、日本はどうするんだと聞きたくなってしまう。高市はこれまで以上にアメリカに言いなりだから、単独でも行けと言われれば戦いを挑むなんてことをやるかもしれない。

高市人気を支えているのは若者層のようだ。初めての女首相、はっきりものを言って勇ましいし、見栄えもいい。そんな声が聞こえるが、日本の将来を担う人たちには高市政権の本質が見えていないのだろうか。自衛隊は人手不足だから徴兵制をなんて言われたら若者たちはどういう反応をするのだろうか。老い先短い僕にとってはどうでもいいことだが、何ともおぞましい未来しか思い浮かばない。

それにしても、前回は排除された壺議員や裏金議員がすべて公認された。代わりに石破に近い議員が冷遇されている。何とも露骨なやり方だが、自民党の穏健派が選挙後に大挙して離党なんてことはおこらないのだろうか。一縷の望みを夢想したくなった。

2026年1月26日月曜日

ケヤキと格闘中です

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今年も二人だけの静かな正月を迎えた。お節はいつもの通りほぼ手作りで、僕は伊達巻きを作った。三が日はお雑煮だったが、おもちは日常的に食べている。僕の得意料理は餅ピザで、これはネットでもあまり見かけないオリジナルだ。この冬は11月から寒くて、薪の消費量は例年になく多い。蓄えは十分にあるのだが、どんどん減っていくと不安な気持ちにもなる。


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そんなふうに思っていたら、暮に近所でケヤキの大木の伐採があって、すぐに欲しいとお願いに行った。そうするといいですよという返事で、何と根元から細枝まで置いていった。まずは玉切りしやすい太さのものを切って、斧で割って右のように2mほどに積み上げた。細枝も短く切って中に詰め込んである。ここまで一ヶ月ほどかかったが、節も多いし、木も固いから簡単ではなかった。チェーンソーの調子が悪くて点火プラグの交換をした。少しましになったが力不足はどうしようもない感じだ。何しろ根元は1mほどの太さがあって、それを玉切りするのは簡単ではないのである。


forest215-4.jpg 僕は気にならなかったが、パートナーが臭い臭いと言う。ネットで調べるとケヤキにはアンモニア臭があるという。乾燥させれば臭いは消えるとあったから、薪としては問題ないだろうと思う。ケヤキは家具材としても使われているが、その特徴は何より強靱さや粘りにあるようだ。それはチェーンソーの切り具合や、斧を打ち込んだ時の手強さでもよくわかった。もらった木も製材したら一枚板が何枚も取れるのだが、人気がなくて輸入材に比べて安価なようだ。

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そんなわけで厳寒の中、堅物の大物と格闘中である。とりあえずは玉切りにはしたが、すべてを薪にしてアルプス積みにするには、まだ一ヶ月はかかるだろう。それでも、これでこの冬の薪の消費量を補えるかというと、ちょっと心細い。何しろ三ヶ月ほどでアルプス積みの三個分をほぼ燃やしてしまったのである。早く春にならないかと願うばかりである。

2026年1月19日月曜日

久米宏とテレビの終わり

久米宏が亡くなった。81歳だから僕とは4つ違いだ。初めに彼を知ったのは1970年に始まった永六輔が司会するTBSの『土曜ワイドラジオTokyo』だった。僕は京都に引っ越してラジオを聴かなくなったし、久米の人気が出た『ザ・ベストテン』は見なかったから、彼についての記憶はほとんどない。しかし1985年にテレビ朝日の『ニュースステーション』が始まると毎日欠かさず見る番組になった。よそ行きの態度で原稿を読むだけのアナウンサーとは違って、くだけた調子で自分の意見もはっきり言う久米のスタイルに好感を持った。

筑紫哲也が司会をする『NEWS23』が硬派的特徴を前面に出して始まると、久米も負けじと発言をして、政治や社会、経済などについて、それまではあまり取り上げなかった事件や問題をニュースにするようになった。夜の10時から12時ぐらいまではいつもテレビをつけていて、横目でちらちら見ながら本を読んだり論文を書いたりといった生活がずっと続いた。80年代から90年代にかけては自分でも一番勉強した時期だったと記憶しているが、テレビをよく見たのもこの時代だったのかもしれないと思う。

今でも一番鮮明に覚えているのは2001年の9月11日に起きたニューヨークの貿易センタービルへの旅客機の衝突だった。高層ビルに最初の旅客機が衝突して大騒ぎになっているところに、また別の旅客機が衝突する。で、二つのビルが続けて崩壊したのである。この事件は『ニュースステーション』が始まる直前に起きたから、『ニュース23』が’終わる頃まで、一瞬も目が離せないほど釘付けになったことを記憶している。ネットはまだ普及途上だったから、テレビの力を見せつける事例だった。

久米は2004年に『ニュースステーション』を辞めている。その理由は明言されていないが、番組内での彼の発言が有力政治家や番組スポンサーから批判され、自由にものが言えなくなったことが指摘されている。その後彼はラジオで番組を持って、言いたいことを自由に話すようになった。2008年には筑紫も『NEWS23』を辞めているが、その理由は肺ガンで、亡くなったのはその7ヶ月後だった。二人が辞めた頃から、僕はこの時間帯にテレビを見ることはしなくなった。ニュース番組で見るのは金平茂紀がキャスターを務める『報道特集』ぐらいで、それも彼が辞めた後は、それほど見なくなった。

テレビが権力やスポンサーに弱いメディアであることがあからさまになったのは東日本大震災があった2011年以降だろう。とりわけそれが露骨になったのは安倍晋三が首相に復活した2013年以降である。そして、そんな力に抗う人もテレビには出なくなった。ネットの急成長に押されて影響力を失ってしまったテレビはますます権力におもねり、スポンサーの言いなりになっている。その意味で久米の死はテレビの終わりと言ってもいいのかもしれないと思った。

2026年1月12日月曜日

黒川創・滝口夕美編『加藤典洋とは何者だったか?』SURE

kato1.jpg 高市早苗が首相になって、急に怪しい状況になってきた。台湾有事で中国を激怒させ、トランプべったりでアメリカ依存をよりはっきりさせた。トランプの傍若無人ぶりはエスカレートするばかりだから、このまま行ったら世界が壊れてしまうのではといった恐怖さえ感じてしまう。こんな時に思ったのは加藤典洋だったらどう発言するかといった思いだった。彼が書いたものの中で一番記憶に残っているのは、1999年に書かれた『日本の無思想』(平凡社新書)の中の敗戦による戦前と戦後の「切断」についての次のようなことばである。
一つは天皇との関係における「切断」です。もう一つは憲法との関係における「切断」です。また三つ目は、戦争の死者との関係における「切断」です。そして最後は、旧敵国との関係における「切断」ということになるでしょう。 『日本の無思想』pp.67-68
黒川創・滝口夕美編『加藤典洋とは何者だったか?』は、こんな主張も含めて、加藤典洋が書き残したすべての著作に触れて、改めてその実像に迫っている。驚いたのはその著作が主だったものだけで50冊を超えているということだった。僕もかなり読んでいるつもりだったが、その2割ほどに過ぎなかったからである。さらにもっと驚いたのは、この本に関わっている人たちの多くが、加藤典洋とかなり近い距離にいた人たちで、生身の彼を良く知っていたということだった。

編者の黒川創は雑誌『思想の科学』で長い間加藤と一緒に編集の仕事をしてきたし、鶴見太郎は加藤が明治学院大学で初めて教鞭をとった時に学生だった。共編者の滝口夕美は黒川のパートナーだが、彼女もまた明治学院大学で加藤の講義を受けている。そんな関係の中から出てくるのは、個人的に良く知っているからこその発言の数々で、著作でしか知らない僕の加藤に対する印象とはずいぶん違ってもいておもしろかった。

加藤は2011年の東日本大震災の時にはアメリカにいて、その揺れを経験しなかった。ところが帰国してすぐに福島に行き、何度も通って『3.11 死に神に突き飛ばされる』(岩波書店)を書いた。政府や原子力の専門家、そしてメディアに対する強烈な批判に対して、僕は納得して読んだが、その時期の加藤がずいぶん変わった印象を持たれたようだった。それまでは発言することはあっても直接行動することが少なかったのに、震災と原発による被害に対しては血相を変えて行動したからである。

加藤は一貫して、日本の戦前と戦後、そして現在における問題や矛盾を突いてきた。僕はその主張に微妙な変化があったことに無頓着だったが、この本では、加藤が見せたブレや変化が指摘されている。安部政権時における憲法と自衛隊、対米従属と戦前復帰型の国家主義の台頭といった矛盾に対して、まるで絡まりあってほどけない糸を必死にほどこうとしていたというのである。

であれば、彼が生きていたならば、現在の高市政権や、トランプ大統領に対してどんな批判をしたのだろうかといったことを想像したくなった。僕はもう半分絶望した気分になっているが、それでも、現状からは目をそらさないでおこうと思っている。いや、そんなんではダメで、今こそ声を大にして批判する必要があるのだ。そんな声も聞こえてくる気がするが、果たしてどうなんだろうか。

2026年1月5日月曜日

ニール・ヤングの反トランプ宣言

neil2.jpg ニール・ヤングが"as time explodes"と名のついたビデオをYouTubeにアップした。歌わないが楽器演奏をバックにホワイトハウスの解体工事が映されるところから始まる。壊されたのは東側部分で、ここに新たに大宴会場を作ろうというのである。ホワイトハウスが歴史的建造物で、大統領に解体する権限があるのかどうか問われている。そもそも工事前には建物自体には手をつけないといっていたのである。

このビデオが次に攻撃するのはトランプにしっぽを振っているAmazonやFaceBookの創業者やテスラのイーロン・マスク、それにAppleのCEOといった人たちだ。「1%が世界を台無しにする」と書かれた横断幕が掲げられている。王様はいらないという反トランプデモや、不法移民追放に抗議するデモには、州兵が動員され、激しい暴力が加えられる。2分ほどのビデオだが、彼の主張は極めて真っ当だ。

このビデオには"as time explodes 2.0"と"as time explodes 3.0"の続編がある。2.0では農作業に従事する不法移民を取り締まる様子や、働き手がいなくなって収穫できずに転がる作物が映し出される。逃げる者には催涙弾が撃たれ、捕らえられた人たちの足には鎖が巻き付けられてる。大規模経営の農場では違法入国かどうかにかかわらず、大勢の労働力が必要なのである。野菜や果物、卵などは当然、品不足になっているはずだ。

3.0は視点を広げて、ヒトラーのユダヤ人虐殺の実写フィルムで始まり、アメリカの開拓時にあった先住民に対する残虐行為が映される。それに続くのはイスラエルのパレスチナでの暴挙である。トランプとネタニヤフが握手をして、ガザへの空爆となる。きれいな町並みが次々と廃墟になり、逃げ惑う人たちにはイスラエル兵が銃を向ける。その他にも世界中で起きた惨劇が登場し、突然、ニューヨーク市長に当選したマムダニが映し出される。

ニール・ヤングはこれまでにも、歌はもちろん活動として、政治批判は行ってきた。で、現在でもその姿勢は変わらない。メタを批判してフェイスブックやインスタグラムのアカウントを停止したし、イーロン・マスクのX/Twitterも辞めている。さらにはAmazonから自分のディスコグラフィーを削除することを表明し、これらのSNSやネットビジネスへのボイコットを呼びかけている。

もちろん、メッセージは音楽でも行っている。新作の ‘Big Crime’ は正面からのトランプ批判の歌である。MAGA(アメリカを再度偉大に)はいらない。町に兵士などいらない。ホワイトハウスで犯罪が起きている。億万長者のファシストが独占するシステムを停止しろ。と、極めて直接的なトランプとその周辺に対する抗議のメッセージである。こんな主張を掲げたコンサートも行っている。

ニール・ヤングはもう80歳だ。しかしその反骨精神は全く衰えていない。多くのミュージシャンが亡くなっていく中で、まさに孤軍奮闘である。彼は2020年にアメリカ国籍を取得して、カナダとの二重国籍になった。二つの国を頻繁に行き来しているのだが、トランプ批判をすることで入国を拒否されるのでと心配されている。 公式サイトには最近の活動が詳細に書かれている。

2026年1月1日木曜日

今年もよろしくです

 

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明けましておめでとうございます。と言いたいのですが、何とも不安の多い年明けです。政権が石破から高市に代わって、急にキナ臭くなりました。台湾有事は日本有事。国会でのこんな発言に中国が激怒しています。その影響が様々なところで出ていますが、首相は失言だったとは認めていませんし、謝罪もしていません。にもかかわらず、政権支持率は高止まりしたままですし、良く言ったなどと絶賛する声も聞こえるようです。

中国は一党独裁の国ですが、日本はどこよりも貿易額が多い国ですから、もっとうまくつき合う必要があるのです。他方で、アメリカにはますます近づいて、親米反中の姿勢が鮮明になりました。しかしトランプ大統領は中国とはうまくつきあいたいようで、台湾有事などは想定していませんから、日本ははしごをはずされることになるかもしれません。

防衛費を増額するために国債に依存した大規模な予算を組むようです。物価が上がり貧困家庭が増え、社会福祉や医療費の国民負担も増えています。首相は積極財政でもっと豊かな国にと言いますが、失敗したアベノミクスの再現では、ますます経済もひどいことになるでしょう。そもそも防衛費の増額を国債で賄うのは、戦争に突入した戦前の政策と同じなのです。

政治や経済、そして社会についての識者の多くが批判しているにも関わらず、高市人気に衰えは見えません。若い世代の支持は特に強いようですが、どこまで歴史や現在の事実を知り、将来を考えているのでしょうか。「日本人ファースト」で支持を急成長させた参政党同様に、真偽不明でも目先の目立つことを大声で主張すれば、それについてくる人が大勢いる。そんな風潮がますます強くなっています。パレスチナやウクライナの惨状を含めて、少しでも光明が差す一年になってほしいと願うばかりです。

私的なことで言えば、77歳になって80代もすぐそこまでやって来ました。ここまでまあまあ健康でこれたことに感謝ですが、身体の衰えを感じることも多くなりました。右まぶたが重たく下がり医者に行くと副鼻腔炎と診断されました。それは治ったと言われたのですが、まぶたはまだ少し重い感じがしますし、鼻がつまることも多いです。

この冬は11月から寒くて、薪ストーブを早くから燃やしましたから、薪の消費量が増しています。であれば、新しい薪を作るために薪割りに励まなければなりません。老骨にむち打って斧を振り上げる。そんな毎日を春先まで続ける必要がありますから、体調に気をつけてと思う今日この頃です。