2022年7月18日月曜日

安倍元首相の死で見えてきた闇

 
安倍元首相が選挙演説中に手製の銃で撃たれて亡くなった。実行した山上徹也容疑者は、母親が入信した旧統一教会で自己破産をさせられたために、彼自身の人生が台無しにされたことを恨んでの犯行と自供しているようだ。安倍は実際、統一教会の広告塔のような役割をやってきたから、韓国にいる教会の教祖を襲うよりは狙いやすいと判断したようだ。奈良の西大寺駅前での犯行は、警護の不備もあって容易だった。

統一教会は文鮮明によって第二次大戦後に韓国で始まり、1954年に「世界基督教統一神霊協会」という名で創設された。日本では64年に宗教法人の認可を受け、「原理研究会」という名で大学生への伝道が始まり、68年には共産主義に反対する「国際勝共連合」が設立された。この設立には安倍の祖父である岸信介が協力したと言われている。統一教会は霊感商法や合同結婚式などで話題になり、批判を受けて、現在では「世界平和統一家庭連合」と名称を変えている。

このように、安倍と統一教会との関係は祖父の岸信介から繋がっている。岸は戦犯として裁かれることをまぬがれ、1950年代の後半に首相になり、60年に大きな反対運動があった中で安保条約を改定させた人である。その裏には当然だが、アメリカの思惑が働いていた。それだけでなく、戦後の日本の政治体制をどう作るか。平和憲法を制定し、同時に共産主義に対抗できる政党を組織して、アメリカに従う体制を作り上げるにはどうしたらいいか。その役割を担う人として岸が使われたと言われている。そして、統一教会を立ち上げた文鮮明との関係を取り持ち、国際勝共連合を設立したのもアメリカの働きによるものだったようだ。

安倍と統一教会との間にはこのような深い闇のような関係がある。そう思えば、彼が主張してきた政策の多くに統一教会の教義との類似点を見つけることはたやすい。反共産主義は言うまでもないが、「世界平和統一家庭連合」という名称のように家庭や家族に対する考えも似通っている。社会を支える基盤には家庭がある。だから夫婦別姓も、子どもを生産しない同性婚も認めることはできないし、LGBTなどのジェンダーフリーも性教育ももってのほかという主張だ。もちろん憲法を変え、軍備を増強させるという方向性にも共通点がある。そしてこのような主張は日本会議や神道政治連盟といった極右の勢力とも一緒だ。

安倍が首相として在任した間にやったことは、まさにアメリカの言うなりの「アメポチ」外交だった。安倍政権が長く続いたのは、その服従的な姿勢の他に、キリスト教原理主義を後ろ盾にリベラルな政策を逆戻りさせたトランプ元大統領との共通点の多さにもあった。何しろアメリカにとって、日本が属国のままでいてくれることが、何より重要なことであるから、安倍ほど扱いやすい政治家は他にはいなかったのである。長期政権を可能にした一番の理由がここにあったことは言うまでもない。

自民党を始めとして政治家の多くは、「世界平和統一家庭連合」が提供する資金や無償で働く秘書の世話になっているという。そのリストも公にされているが、マスメディアはそのことをいっさい追求していない。何しろマスメディアは選挙が終わるまでは統一教会の名前を出すこともしなかったのである。しかし、週刊誌やネットなどでこういった隠された実態が暴露されはじめてもいる。安倍という大きな箍(たが)が外れた今、これからどんな事実が闇からあからさまになっていくか。興味津々だが、それはまた日本の混乱と衰退を進める要因になるだろう。岸田首相は安倍を国葬にすると発表した。僕にはそれが日本自体の国葬のように聞こえた。

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