・民主党が政権を取ったことで、また、「団塊」ということばを目にするようになった。鳩山をはじめ政権の中枢部に団塊世代が多いからだ。そういえば、自民党には団塊世代と言える有力な政治家は見あたらない。大学紛争やカウンター・カルチャーの世代だったから、当たり前かと思うけれども、改めて、自民と民主の違いに気づかされた
・選挙後の動向を見ていると、政治が大きく変わりはじめていると思う。僕は民主党を支持しているわけではないけれども、その変化には、これまでにない新鮮さを感じて、期待したい気がしてしまう。予算の使い方の大幅な見直しやアメリカとの関係の仕方といったことはもちろんだが、何より、イメージとして印象が強いのは、テレビに映る鳩山夫妻の姿だろう。
・飛行機のタラップから手をつないで降りる二人はきわめて自然で、わざとらしさがほとんどない。それが普段の生活そのままであることは、感覚的によくわかる。同様のことは菅直人夫妻にも以前から感じていたことだが、それは、僕自身が普段している夫婦の関係の仕方に共通した特徴であるからにほかならない。
・僕は「団塊の世代」というくくり方には、以前から異議を唱えてきた。それはこの呼び名が広まったのが、当の世代が三十代になろうかという時点だったことと、数が多いという以外に、何の特徴も意味していない、身も蓋もないことばだと思ったからだ。この世代は、「団塊」と名のつく以前には「全共闘世代」「ビートルズ世代」などと呼ばれていたし、アメリカでも「ベビーブーマー」のほかに「緑色世代」「ヒッピー」「対抗文化」等々さまざまな名がつけられていて、それらはすべて、中身の特徴をあらわしていたのである。
・僕にとってこの世代の特徴は、何より「ライフスタイル」への自覚にあると思ってきた。生活の仕方、人間関係の持ち方について、従来の常識を疑い、新しいものを模索する。それは一方で、社会全体に大きな影響を与える力も持って、今では当たり前のものになった部分もあるけれども、ほとんど忘れられてしまった側面も少なくない。結婚した夫婦が作る関係は、日本では明らかに後者に属していて、そのことは後の世代でもあまり変わっていないと言えるだろう。
・僕が結婚した頃に「ニュー・ファミリー」ということばがはやった。対等な関係で、家事や育児も分担する。そんな生活の仕方が注目を集めて、実践しながらそのことを本に書いた僕のところに新聞やテレビや雑誌がよく取材にきたのは、もう30年近くも前のことだ。僕はそのことをずっと自覚しながら生活スタイルを実践し、記録し、考察もしてきたが、実際に夫婦関係のスタイルは、30年たった今でも、あまり変わっていないと言える。特に僕の世代の人たちの多くは、昔ながらの関係に収まってしまっている。
・僕が鳩山や菅夫妻に感じるのは、「ニュー・ファミリー」の洗礼をライフスタイルとして実践し、定着させたカップルだという仲間意識に近い印象だ。それは「団塊」世代から始まったスタイルだが、「団塊」世代に共通したものでは決してない。むしろ、ごくごく少数の人だけに見られる特徴だろう。だからこそ思うのだが、世代が一緒であることで感じるのは共通性ばかりでなく、同じ時代を過ごしたのに「なぜ?」と思う違和感のほうが遙かに多いのである。保守とか革新とは何より、身近な生活の中でこそ検証できるものなのである。