2001年10月22日月曜日

喜寿からのインターネット

  • 僕の父は今年喜寿を迎えた。母ともにそろって、いたって元気だ。それぞれに、趣味をもっていて、書道、水泳、太極拳、鎌倉彫、人形作りなどをやっている。都営の交通機関が無料ということもあって、よく都心にも出かける。元気で何よりだが、年寄り夫婦の二人暮らしはやっぱり、ちょっと心配でもある。
  • 実は去年の暮れに、父は近所で、自転車同士でぶつかって大腿骨を骨折した。3週間ほど入院して、一時は大騒ぎだったが、リハビリも順調にこなして、今は依然と変わらないほど元気になった。
  • 退院直後に誕生日を迎えたこともあって、僕はそのお祝いにパソコンをプレゼントしようと思った。以前ほどには気楽に外出できなくなるかもしれないから、家で過ごす時間が増えるだろう。何かやれるものが必要になる。そんなふうに考えたからだ。
  • 最初は、気乗り薄の返事だったが、3カ月ほどたって、やってみる気になりはじめた。外出もしはじめるようになったから、それに慣れることもかねて、新宿までパソコン教室に通うか、と言った。僕は、気が変わらないうちにと、すぐにiMacとプリンターをプレゼントした。
  • 父は以前にワープロを使っていたこともあったから、全くの初心者というわけではない。しかし、インターネットやメールをやるならと、ローマ字変換を勧めた。だからマウスはもちろん、キイボードの扱いも最初はひどく面倒のようで、見るからにぎこちないものだった。戦中に学校に行った世代は、アルファベットは苦手のようだ。「か」は何? 「ka」だよ。「きゃ」は? 「kya」。ちいさい「っ」は?………。70歳というか80前の手習いである。一緒に母もはじめることにしたから、たまに行くと質問責めでたいへんだった。しかも、説明してもなかなかわかってもらえない。
  • そんなふうにして最初は文字の打ち込みの練習がつづいた。パソコン教室で習ってきたことの復習でも、かなりの時間が必要だったようだ。で、教室が終わって、いよいよネット・デビューということになった。
  • プロバイダーはケーブル・テレビを勧めた。月6000円とちょっと値段は高かったが、つなぎっぱなしのブロードバンドで、遅いだの繋がらないだのといったトラブルが少ないと思ったからだ。うまくつかえれば、ぼくのところよりもずっといい環境になるはずだ。実際やってみると、早い早い。大学でやるよりもサクサクといく。
  • で、とりあえず興味関心がありそうなサイトを見つけてブックマークをつけてやる。近所のバスの時刻表から天気予報、新聞社やテレビ局、さらには小泉首相のページまで、いろいろとアクセスして、便利なこと、おもしろいことを説明した。そのあとは、メール。
  • ソフトの概観の説明から始まって、メールの打ち方、出し方、来たメールの読み方、そして、整理の仕方。もちろんいっぺんに話したって、すぐにはわからない。とりあえずは自分のメール・アドレスを登録して、自分宛に出してみる。次は父と母がそれぞれ相手宛に、そしてぼく宛のメール。
  • そんなところまでで、僕は夏休み。東京に出かけることもなくなったから、お互い連絡することがあれば、メールで伝えることにした。「出したけど着いてない?」「着いてないよ」といったやりとりを電話で数回。慣れてくると、「〜のアドレスを教えてくれ」と言い始めた。僕の息子(孫)や親戚でメールをやっている人たちを教えたが、出したって、すぐに返事があるわけではない。つなぎっぱなしのブロードバンドだから、しょっちゅうメールチェックをするのだが、どこからも届いていない。使いこなせるようになると、今度はそれを試す相手が必要になる。
  • ここまではもっぱら父がリードをしていたが、ここからは母の舞台。日頃から電話をつかうのはもっぱら彼女で、相手はほとんどが友達だ。父は用事がなければほとんど使わない。これはぼくのところでも同じで、おしゃべり相手と日常的に接触するのは、どこでも女性の方が活発のようだ。だから、母は友達とのメールのやりとりをはじめたが、父にはそれをする相手がいない。何とかと思うが、こればっかりは自分で探してもらうしかない。
  • と、こんなわけで、父と母は新しいコミュニケーション手段を使い始めた。若い学生たちとはちがって歩みはのろいが、そのうちにホームページの作り方でも教えようと思っている。「インターネット」「メール」「ホームページ」「IT」などといったことばを耳にしながら、自分では何のことやらよくわからない。そう感じると、自分が世の中からひどく遅れてしまっているのでは、と不安になってしまう。そうならないための、あるいはボケ防止のための手習い。動機づけがうまくいって、やれやれといったところだ。
  • 0 件のコメント:

    コメントを投稿

    unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。