2002年9月23日月曜日

やっぱり野茂が一番!


・今年の野茂は本当にすごい。投げたら負ける気がしないし、実際に負けない。終盤にきての毎試合の好投には賞賛をこえて尊敬の念をおぼえてしまう。それにしても動じない、あの強心臓は驚きだ。

・今年野茂は古巣のドジャースに復帰したが、同時に石井も入ってきた。その前半戦で石井は出ると勝ちの好調さ、幸運さで、一方の野茂は好投しても報われない試合が続いた。一時はもうすぐ10勝の石井と2勝5敗の野茂という開き。例によって野茂はマスコミに対してぶっきらぼうだから、話題はもっぱら石井。イチロー、新庄とあわせて、野茂はすっかり影に隠れてしまっていた。ところが、そんなことに無頓着なところが彼のすごさで、5月後半から成績は好転しはじめた。それ以降14勝1敗(9月22日現在)で、チームの完全なエースになっている。

・ところがである、例によってNHKの中継はイチロー中心。マリナーズが負け続きでプレイ・オフ進出の可能性がなくなってからも、消化試合を律儀に中継している。一方、ジャイアンツとの熾烈な争いを展開しているドジャースの試合は、石井が打球を頭に受けて戦線離脱をしたから、野茂が出る試合以外は無視されたままだ。こういう融通性のなさにはいまさらながらにあきれてしまう。

・日本人の出場する試合中心という方針だから仕方がないのかもしれない。けれども、それならばなぜ、今年大化けして13勝もあげた大家の投げる試合を中継しないのか、吉井だってローテーションでがんばっているじゃないか。ニュースでも「今日のイチローは何打数何安打で打率は〜」と毎日やっているが、勝敗の結果は無視といったことがよくある。NHKは本当にメジャー・リーグのおもしろさを日本人に広める気があるのか、疑ってしまう。

・野茂はもうすぐメジャーで100勝をあげる。日本での成績とあわせて200勝投手になるのは時間の問題で、たぶん来シーズンには実現するだろう。三振の数と合わせて、こんなすごいピッチャーがいることに、なぜメディアやスポーツ・ジャーナリズムは敬意を払わないのだろうと思う。何より野茂は日本のスポーツ界を変えた革命家なのである。そのすごさがわからないのは、たぶん、スポーツの世界に起きた大きな変化に心底気づいていないからだ。

・おなじことはサッカーにもいえる。中田の話題がめっきり減って、今は稲本と中村ばかり。新らしもん好きで飽きやすい性格は救いがたい。中田はインタビューをイタリア語でしかしないようだ。独自のHP開設もふくめて、日本のメディアを無視する姿勢は徹底している。野茂のぶっきらぼうさも、あれは一つの批判的態度なのかもしれない。そんなふうに言いたくなるほど、メディアは内向きで、しかもミーハー志向だ。スポーツ選手の評価は記録の積み重ねが第一。勝利、三振、打点、ホームラン、安打、打率、あるいは得点にアシスト。目先の関心に振り回されていては、選手がかわいそうだし、失礼だろう。

・石井が頭に打球を受けた試合は見なかったが、あらためてスポーツの怖さを感じた。彼にとっての今シーズンはこれでおしまいかもしれないが、日本でお山の大将だったから、活躍もスランプも、そしてケガもふくめて、ずいぶんいい経験をしただろうと思う。ところで、野茂は近鉄時代にやっぱり頭に打球を受け、陥没骨折をした経験があったそうだ。で、8日後にはマウンドに登ったというから、その怪物ぶりにはあきれてしまう。ドジャースのチームメイトも彼のタフさには驚き、敬服していて、「ウォリアー」とか「馬車馬」と呼んでいる。体調の維持を第一に考えての生活という自覚も徹底している。だから、エースというだけでなく、チーム・リーダーとしても頼りにされているようだ。

・そんなわけで、プレイ・オフ、そしてワールド・シリーズと野茂がくりかえしいう目標が今年こそ叶うように、と最近はインターネットでドジャースの動向を追いかけて一喜一憂したり、ファンサイトをのぞいたりしている。野茂の投げる試合はビデオにしっかり撮って、いい場面をくりかえし見てにんまり。8年目の野茂マニアはもうすっかり病膏肓だ。 (2002.09.23)

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