- Bob Dylan "Shadows in the Night"
- Van Morrison "Duets"
- Madonna "Rebel Heart"
- Joni Mitchell "Through Yellow Curtains"
・ディランがフランク・シナトラを歌う。ちょっと耳を疑うようなニューアルバムだが、クリスマス・ソングも歌って、それがなかなか良かったから、期待して買うことにした。シナトラの歌には詳しくないから、知っている曲は多くはなかった。しかし、ディランの歌い方はいつもと違ってメロディに合わせていたが、バックはいつものメンバーで管も弦もない。そんなサウンドはきわめて新鮮な印象だった。カバーであってカバーでない。批評には、スタンダード・ナンバーにかぶせられたパターン化したカバーを剥がす試みと書いたものもあった。手垢にまみれてお蔵入りになった歌が新しい歌として蘇ってきた。そんな感じで聴いて、心地いい気持ちになった。
・ヴァン・モリソンのニュー・アルバムはタイトル通り全作デュエットである。新曲はなく、しかもヒットしたものではない地味な曲ばかりを16曲集めている。デュエットの相手も有名なのはマーク・ノップラーとスティーブ・ウィンウッド、ジョージ・ベンソン、あるいはナタリー・コールぐらいだ。しかし、すべてが新たに録音されたもので、オリジナルの歌とはかなり違っている。
・たとえば、「アイリッシュ・ハートビート」は1988年にチーフタンズと出したものだが、マーク・ノップラーとのデュエットはまったく新しい歌のように聞こえてくる。懐メロを懐メロとして歌うのではなく、新しい歌として蘇らせる。そこにはディランと同じ試みが感じられた。
・マドンナのニュー・アルバムのタイトルは「反抗心」だ。このアルバムには何種類もあり、ブックレットにはSM風の過激な写真が載っているし、グラミー賞の授賞式では尻丸出しのコスチュームで出席したようだ。もうすぐ還暦だが心も身体も若い、というよりは懸命にがんばって、若いままでいることに懸命だ。ブックレットを見ながら聴いて、改めてそんな印象を持った。老成したディランやモリソンとは違って、マドンナはあくまで突っ張り続けている。しかも、ナイーブな一面も同時にさらけ出している。ビジネスとしても大成功のようだから、やっぱりすごい人だなと思った。
・ジョニ・ミッチェルのアルバムはデビュー前に録音されたもので、2枚のCDに30曲以上が入っている。1966年から67年にかけてフィラデルフィアのライヴ・ハウス、セカンド・フレット・クラブで演奏した時のライヴを収録したもののようだ。70歳を過ぎてなぜ、20代前半のデビュー以前のライブを発表したのかよくわからない。しかし、歌の多くはデビュー後に発表されたいくつものアルバムに入っているから、早くから持ち歌をたくさん作って歌っていたことはよくわかった。
ところが彼女は、モルジェロンズ病という奇病にとりつかれて闘病中のようだ。意識不明で病院に搬送されたといったニュースもある。