・NHKが中継した今年のメジャー・リーグは、ほとんどが大谷翔平だった。特に期待をしていたわけではなかったが、開幕早々の活躍にすっかり魅了されて、その後現在まで、中継した試合のほとんどを見てきた。投げて打って走る。そのどれもが一流だから、アメリカでも大きな話題になった。野茂にはじまり、イチローや松井が活躍してきたが、今までメジャー・リーグでプレイした日本人選手のなかで、投げても打っても走っても、最高のプレイヤーであることは間違いないと思った。
・もっとも、6月には右肘の靱帯を損傷して、1ヶ月試合に出られなかったし、3ヶ月ぶりに登板した試合で再度靱帯を損傷するという事態になった。もうすぐトミー・ジョン手術をするそうだから、ピッチャーとしては来シーズンも投げられないから二刀流はしばらくお預けになってしまう。まだ24歳で、これから10年以上プレイすることを考えれば、焦らずにしっかり直して欲しいと思う。何しろこんなに才能のある選手は、日本のプロ野球の歴史で初めてで、もう出ないかも知れないからだ。
・彼の今年の成績は投手としては10試合に先発して51イニングを投げ、4勝2敗、防御率3.31で三振を63取っている。また打者としては、104試合に出場して、打率.285でホームランを22本打ち、61の打点をあげた。盗塁も10個で、俊足を飛ばして2塁打にしたことも何度もあった。日本人離れした体格とは言え、キン肉マンのような選手たちから見ると彼はスリムである。しかし、その打球速度はトップ・クラスで、センター方向に打つホームランが、大きな魅力のひとつになった。
・大谷が所属するエンジェルスは、彼の活躍に牽引されて、アメリカン・リーグの首位争いをしていたが、怪我で欠場してからは失速して、早々とプレイオフ出場の見込みがなくなった。そこには故障した選手が大谷以外に何人もいたという理由もあった。7月末には正捕手や二塁手を放出し、不振の選手を解雇して、若手中心のチームになったから、勝てない試合を見ることが多かった。何よりリリーフ陣はお粗末で、勝っている試合を逆転されることが何度もあった。
・だから見ていてうんざりすることが多かったが、マイナーから抜擢された選手が徐々に力をつけていく様子も目の当たりにした。中には28歳でやっとメジャーに上がれたキャッチャーなどもいて、マイナーに落とされないよう必死にプレイする様子は、これまであまり気にとめることがない光景だった。何しろ後半戦はレギュラーの半数が新人で占められるほどだったのである。
・そんなふうに、久しぶりにメジャー・リーグの試合につきあったが、熾烈な争いをするチームの試合はそっちのけで、エンジェルスばかり中継するNHKの姿勢はどうかとも思った。故障したダルビッシュは別にして、田中投手が投げるヤンキースの試合を中継することはあっても、前田が投げるドジャースの試合はほとんど無視された。日本人選手が出なくても、見たい試合、選手はいくらでもいるのにである。MLBを中継してもう20年以上になるのに、日本人選手ばかり追いかける姿勢は相も変わらずである。
・去年のメジャー・リーグでは青木宣親選手が気になった。ヒューストン・アストロズに所属して.280前後の打率を残していたのに、トロント・ブルージェイズにトレードされ、すぐにまた解雇されて、最後はニューヨーク・メッツに拾われた。彼の出る試合の中継はほとんどなかったから、ぼくはもっぱらネットで彼の出る試合を追いかけた。今年彼はヤクルト・スワローズに復帰して、.330に近い打率を残している。.280と.330。これがメジャーと日本の差なのかと改めて認識した。
・とは言えメジャー・リーグはフライ・ボール全盛で、ヒットよりはホームランを打つ選手がもてはやされていて、三割打者は減っている。イチローの出現によってスモール・ベースボールが見直された時期があったが、ボンズやマクガイヤーやソーサが打ちまくった時代に逆戻りしたようだ。ぼくはもちろん、そんな傾向は大味な気がして好きではない。