1997年3月3日月曜日

Beck "One Foot in the Grave",The Smashing Pumpkins "Mellon Collie and the Infinite Sadness"


beck.jpeg・2月の末にWow wowでグラミー賞を見た。E.クラプトンで始まって、B.スプリングスティーンで終わるという内容は、僕にはきわめて素直に受けとれるものだった。しかし、これだけでは、やっぱりロックはもう新しいものが出なくなってしまったのだな、という思いを確認するだけで終わってしまう。実際、そんな感じもしたが、見ていて興味を覚えたミュージシャンも何人かいた。ベックとスマッシング・パンプキンズである。
・もちろん、この人たちをはじめて聴いたというわけではない。ゼミの学生が僕の研究室にCDを持ってきたのを何度か聴いたことがあった。ところが、その時には、例えばベックについては何だそれ!?といった反応をしてしまったようだ。調子っぱずれなサウンドが耳障りで、奇をてらったローファイの一つか、としか思わなかったのだと思う。スマッシング・パンプキンズについては、ほとんど記憶がない。学生が「持ってきて聴きました」というからたぶん聴いているのだろうと思うが.............。で、さっそくTower Recordに行ってCDを買ってきた。
・ベックの"One Foot in the Grave"は、最初のうちはやっぱり聴きづらかった。わざとギターの調弦を狂わせているのがなんとも不自然な気がした。けれども、聴いているうちにだんだんなじんでよくなってきた。この手のサウンドは僕は決してはじめてではない。例えば、ウッディ・ガスリーやロバート・ジョンソンのレコードは、まさしくそんな感じである。前者はフォーク、そして後者はロックンロールの始まりとなった人だが、彼らの歌や演奏は民俗音楽の研究者がポータブルのテレコを使って収集したものがほとんどである。ギターだって、弦だって決して上等のものを使っていたとは言えなかったはずだ。だから、調子っぱずれの聴きづらいサウンドになるのは当然のことだった。
・ベックはそんな、ノスタルジックなサウンドを再現しようとしたのだろう。聴いているうちに僕は、この人はかなり真面目に、ポピュラー音楽の原点に戻ってみようとしているのかもしれないと感じ始めるようになった。どんなサウンドでも自由自在に作れる時代に、わざわざ、素朴な音に挑戦する。そう思うと、何か面白い気がして、ますますベックに興味を覚えるようになった。彼には90年代のボブ・ディランというキャッチフレーズがついているようだ。うん、なかなかいい。けれども、こんなサウンドが若い人たちに受け入れられ、支持されるというのは、どうしてなのだろうか。そこは一度ゼミの学生たちと話してみたいと思う。

pumpkins.jpeg・もうひとつ、スマッシング・パンプキンズ。ボーカルはスキン・ヘッド、アジア系のギター弾きは髪の毛が三毛猫、そしてベースの女の子は無機質な感じの化粧をしていた。外見を見る限りはよくありがちなバンドなのだが、演奏した"1979"という曲はすぐにいいなと感じた。CDを買って聴いてみると、静かな曲とうるさいものが交互に入っていて、何か分裂気味な印象を持った。ハードなやつは僕はあまり好きそうになれないが、ちょっとボリュームを落とした曲の中には、いいものがずいぶんあった。同じような傾向はパール・ジャムにも感じるのだが、一枚のCDにこんなふうにごちゃごちゃにれるのはどうしてなのだろうか。それもまた、新学期になったら学生たちと話してみたいと思う。

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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。