・気になる3人のアルバムが相次いで出た。長い通勤時間には読書とウォークマンが欠かせないが、ここ数往復、ぼくはこの新しいアルバムばかりくりかえし聴いている。で、いまだに飽きない。京都から東京への朝の新幹線の中ではスプリングスティーンが目を覚ましてくれるし、東京から京都への夜の車内ではトム・ウェイツのけだるい声がたまらなくいい。そしてヴァン・モリソンはどちらでもごきげんだ。新しい人たちが悪いというわけではないが、やっぱり、同世代のミュージシャンの今を聴くのが一番だ。
・ヴァン・モリソンの活動はここのところ精力的である。心臓に持病を抱えているのにコンサートもして元気のようだが、"Back on
Top"もなかなか充実している。友達や恋人について語り、季節を歌う。そしてアイルランド。過去への郷愁と現実への醒めた目、それにもちろん、生きることへの強い意志.......。
ハイウェイから脇道に一人はずれ
俺はまだ家庭を探し求めている
道ばたで朝目を覚ますと
頭は痛く、手は冷たい
雲の中の銀の裏地をまさぐって
俺は哲学者の石を探す
"Philosophers Stone"
・トム・ウェイツのアルバムは本当に久しぶりだ。ライナーノーツには6年ぶりとある。アル中で入院でもしているのではと思っていたが、相変わらずの声が聴けた。「裏通りの放浪者」とか「酔いどれ天使」といったイメージとは違って、奥さんとすてきな暮らしをしているようだ。このアルバムも田舎の農場で録音した。
俺が素材を集める役で、カミさんがコック。彼女が言うんだ。「うちに持って帰りなさい。そしたら私が調理してあげるから」ってね。...........彼女は俺の本当の愛だよ。音楽に関しても、人生に関しても、彼女のように俺が信頼できる人間は他にはいない。
・アルバムの1曲目は"Big in Japan"、「日本では大物」という意味だ。アメリカではすでに忘れられた人が日本では人気者で、コンサートをやったりコマーシャルに出たり。エンターテイメントの廃品置き場とちょっと辛辣な日本批判だが、そんなこと言わずにコンサートをやってほしいとぼくは思う。
・最後にブルース・スプリングスティーン。彼は他の二人に比べたらまだまだ昔のイメージに囚われ、煩悩に悩まされているようだ。地味な前作"the
ghost of tom
joad"とは違って、"Tracs"は4枚組のCDで同時に世界ツアもはじめた。日本でもちょっと前に1ページ全部の新聞広告が出された。"18
Tracs"はそのベスト盤である。
・今までの未収録曲を集めたもので、さらにそのベスト盤だから仕方がないのかもしれないが、アルバムとしてのまとまりがない。日の目を見なかった曲にもいいものがある。作った者にはそれぞれに思いや愛着があるだろう。そこに光を当てる。"Tracks"はそんな目的で作られたようだが、やっぱりいい曲は少ないなと思った。しかし、良い悪いを別にして、すべてをさらけだそうとする姿勢はいかにも彼らしいが、ぼくは時に食傷気味になってしまう。
(1999.06.01)
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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。