・東芝EMIで宣伝の仕事を担当している水越さんにプロモーション用のCDをたくさんいただいた。彼とは去年龍谷大学で催したシンポジウム「ビートルズ現象」でご一緒した。彼の話は、ビートルズのおなじみの曲を集めた「ビートルズ1」をヒットさせた、その裏話が中心だった。
・アルバムとしてのCDは基本的にはミュージシャンが一つの作品としてつくりあげる。デビュー・アルバムから始まって、2作目、3作目と出していって、それぞれの音楽的な世界が明確にされていく。あるいはシングル盤でデビューして、何曲かヒットさせた後に、それがまとめてアルバムになるということもある。さらに、どんなミュージシャンも数年たって持ち歌がたまると、その中から比較的ポピュラーなものを集めて「ベスト盤」を出す。
・好きなミュージシャンのアルバムをすべて買えばベスト盤はいらないはずだが、そこに未発表曲とか別テイクなどをいれることがあるから、ファンはその曲だけのためにやっぱり買わされてしまう。また、ライブ盤なども出てくるから、同じ歌や曲をいくつも買って持つということになる。買わされる側にとってはちょっとしゃくにさわるところだが、商品化の可能性をたえず考えている売る側にとっては、独自の企画でリメイクしたものをいかにして売るかということは死活問題なのである。
・水越さんからもらったCDのなかには、そんな企画ものがいくつかあって、それが割と売れているという話を聞いて興味をもった。たとえば「Super
song in
Vision」はテレビCMに使われた歌ばかりを集めたアルバムで、聴いているとCMそのものが頭に浮かんできて、それぞれのミュージシャンのアルバムで聴いているのとは違う印象をもった。
・テレビを見ていて、ときどき「おや?」と思うような曲や歌を耳にすることがある。企業や製品のイメージにあっていたりいなかったするし、時にはCM制作者の趣味が見え隠れしたりする。ぼくは民放の地上波はめったに見ないから、CMにふれることは少ないし、邪魔だと思ってるからすぐにチャンネルを変えたりするのだが、聴きなれた曲には思わず耳を傾けてしまう。最近のものだとロキシー・ミュージックの"More
than This"(トヨタ「クルーガー」)、イエスの"Owner of Lonely
Heart"(日産「バサラ」)などがあって、このCDにもちゃんとおさめられている。
・このTVCMソング集を聴くと、自動車のCMにクラシックなロックが使われていることに気づく。三菱自動車「レグナム」がレオン・ラッセルの"Song
for
You"、スズキ「ワゴンR」がデヴィッド・ボウイの"Starman"、その他にもダイハツ「ムーヴ」がクイーン、トヨタ「プレビス」がシカゴ、ホンダ「VAMOS」がシーカーズとずらずら並んでいる。そういえば、ぼくが乗っているレガシーのCMもロッド・スチュアートなど、クラシックなロックが使われていた。これは、車とロックの関係から考えたらいいのか、それともユーザーの世代との繋がりなのか、あるいはcM制作者の趣味なのか、おもしろい傾向だなと思った。
・いただいたものの中には、ほかに恋愛映画の主題歌ばかりを集めた"Love
Ring
Cinema"というのもあった。それには、わりとあたらしい「タイタニック」から「男と女」や「禁じられた遊び」といった古いものまで20曲ほどがはいっている。それぞれはよく知っている曲で、好きなものが多いのだが、つなげて聴くとかなり違和感を感じたし、笑ってしまう場合もあった。
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ぼくは映画のサントラ盤はよく買う。最近の映画はロックをいくつも挿入させるものが多いし、その選曲などが映画の魅力の一つになっているものも少なくない。「トレイン・スポッティング」はその典型だし、ヴィム・ヴェンダースやジム・ジャームッシュの映画には音楽が不可欠だ。
・まったく別の曲や歌を自分がつくる作品のなかで一つにする。それが映像と一体化して一つのコンテクストを構成する要素になるとき、個々の曲や歌は、まったく違うものとして再生する。映画の挿入歌(曲)やCMソングのおもしろさは、たぶんそこにあるのだろうと思う。
・そのCMソングや映画音楽をさらにコラージュして一枚のCDにおさめる。それは、たぶんウォークマンの普及以降、多くの人がそれぞれにやってきたことだと思う。MDやパソコンを使っての編集がますます容易になっているから、パーソナルな形では当たり前なやり方なのかもしれない。
・だから、一人一人が自分の趣味にしたがってつくるものなのではという気がするが、そういう傾向があるからこそ、レコード会社が商品化を考える余地が生まれるのかもしれないとも思う。「個性」はたぶん、商品にとって重要な付加価値の要素なのだろう。
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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。