2007年7月2日月曜日

河口湖と七福神


・漫談家の綾小路きみまろは富士河口湖町の特別町民である。住まいは僕の家の近くにあり、住民登録もしているようだ。彼は2004年度の山梨県長者番付で2位になっている。河口湖町にとっては福の神で、財政面でも話題づくりの面でも貴重な人となっている。
・そんな重要人物が最近、所有している銅製の七福神を町に寄付して、町議会を混乱させている。町長はその寄贈物を公開するために、新たな施設をつくることを考えたのだが、町議会で政教分離の原則に反するという批判が出て、否決されたのである。
・七福神の寄贈や、それを展示するための町の施設づくりを、政教分離を理由に反対するのは奇妙だが、怒った町長は、これまで慣例として行われてきた富士山の山開き神事や河口湖湖上祭の水難供養などの神事や仏事にも、金も人も出さないことにすると反撃したそうだ。特別町民である人気タレントの善意の寄贈がとんだ問題を引き起こしている。報道されたところでは、当のきみまろも困惑しているという。

・この問題をどう考えたらいいか。町政は今、そのことで混乱しているが、僕は当事者全員に対して、腹立ちというより呆れの感想を持っている。だいたいきみまろは、なぜ河口湖となんの関係もない七福神を町に寄付しようと思ったのだろうか。そして町長はなぜ、それを、施設をつくって展示をしようとしたのだろうか。あるいは町議会はなぜ、政教分離などという奇妙な反対理由を出したのだろうか。河口湖町には富士浅間神社がいくつかあり、富士山や河口湖とは切っても切れない関係にある。年中行事に町が深く関与してきたことを考えれば、おかしな理屈であることはわかっていたはずである。
・議会は町長の提案に対して、富士山や河口湖と七福神は無関係だから展示する意味はない、といえばよかったはずである。観光地として魅力あるものにするためには、何よりイメージが大切で、七福神を飾るのはくそも味噌も一緒の発想だ、といえばよかったのである。そう言えない理由は、人気者で高額納税者であるきみまろに遠慮した以外の何者でもない。同様の遠慮は、おそらく町長の対応にも大きく影響したはずである。だとすれば、きみまろは「困惑」などといって町の対応のせいにするのではなく、自分の行為のとんちんかんさを反省して、寄贈をやめるべきだろう。特別町民などとおだてられて天狗になっている。そんな批判が強くなる前に、「ちょっと冗談が過ぎました」といって取り下げるのが、笑いを売り物にする人の対応としては懸命のように思う。

・彼は、最近、美術館などが建ち並ぶ湖北の観光スポットにグッヅや焼酎を売る店や焼き肉レストランを出した。河口湖に七福神がふさわしいのなら、自分の店に展示すればいい。しかし、そんなことをしたら、店のイメージが台無しになる。何しろ彼が店を出した地区は、河口湖美術館、オルゴール美術館、久保田一竹美術館などが並び、小ホールなどもあるきわめておしゃれな地区にあって、それなりに工夫した雰囲気を売り物にしているのだから。
・町長は長年、河口湖の観光地としての魅力づくりに手腕を振るってきた人である。次期には立候補をせず引退をするようだ。彼の任期中にできた施設を見渡せば、彼が河口湖周辺をどのようなイメージで作りかえようとしてきたかがよくわかる。その成功は、他の観光地化をめざす自治体の手本にもなっているようだ。
・観光地であれば、一つの明確なポリシーを打ち出して、それに沿ってイメージを作り、環境を整備する。もちろん、個々の施設だけでなく、全体の景観にも注意をめぐらす。河口湖にはまだまだ余計なもの、ちぐはぐなものが目につくが、よそよりはかなりましな町づくりをしてきたことは感じられる。
・きみまろ御殿は富士山と河口湖を見おろす高台にある、彼はその景色に惚れて、そこに家を構えた。であれば、自分をその自然にとけ込ませるようにすることが大事であって、異物のように悪趣味に目立たせてはいけないはずである。

P.S.
・一度否決された提案が再提出され、今度は承認されたようだ。
・いま、河口湖はラベンダーの花盛りで、それを見にやって来る人たちでにぎわっている。富士山と河口湖とラベンダーを一望できる大石の自然生活舘は見事だが、そこで同時に数年前から「花のナイアガラ」という奇妙なイベントが行われている。プランターを階段状に摘んだものなのだが、目立つのはプランターばかり。「関東最大の花のナイアガラ」と書いた看板が湖畔中にたてられているが、「関東最悪の花のナイアガラ」と読み替えたくなるほど趣味が悪い。せっかくのラベンダーが台無しで、こんなセンスで七福神を飾られたらと思うと、ぞっとしてしまう。やれやれ………

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unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。