・8月になって大学もやっと夏休みになった。と、ホッとした途端に熱が出て、数日爆睡が続いた。疲れだから寝れば治る。これは僕にとってはよくあることだ。今年の夏は暑いが、河口湖は夜になれば涼しくなって、寝苦しいことはない。また午前中も涼しいから、自転車はもっぱら朝のうちに乗っている。さすがに汗びっしょりになるが、バルコニーのハンモックで身体を揺らしていると、心地いい風に包まれてほてりが取れてくる。ケヤキや唐松の林越しに青い空と白い雲が見える。
・家の周囲は雑草が生え放題だが、いろいろな花が次々と咲いている。そのヤマユリがいつになく大量に咲き誇った。細い幹に白くて大きな花が咲くから、重すぎて垂れてしまう。野生なのにどうしてなのか、何かそれなりの理由があるのだろう。だから細い竹竿をつけてまっすぐにしてやろうかと思ったがやめにした。そのヤマユリが消えたらウバユリが咲き始めた。これもまた例年になく多い。どうしてなのだろうか。そう言えば、この時期に来てユリの花を食べる猿の群れを今年は見かけない。猿や鹿、猪の害が深刻で駆除をしていると聞いているせいかもしれない。
・ところでお盆休みに引っかけてまた祭日が増えた。お盆休暇が一日長くなるのはいいことかもしれない。しかしそれはまた、国が休日を増やしてあげなければ休めない風潮が少しも改まらないせいでもある。先進国で日本ほど祭日の多い国はないが、また日本ほど個人の意思で休暇(有給)が取れない国もないのである。権利として認められているのに取らないのは、企業のせいだったり、同僚に気兼ねしたりするためだ。
・多くの人が同じ時に同じ程度の休みを取って、同じような過ごし方をするから、観光地は混み、高速道路は渋滞する。河口湖の湖畔には観光客と車が溢れているし、富士山は登山者が行列をなしているようだ。数年前から中国などのアジアからの訪問者が激増しているから、今年は特にすごい混みようだ。住人にとっては迷惑千万でいいことは何もない。
・富士山は入山料をしっかり取って、登山の装備もチェックすべきだと思うが、山小屋や土産物屋を気遣ってか、任意の入山料で装備や服装のチェックもない。湖畔の道路には狭いところがいくつもあるが、大型の観光バスが走るし、センターラインのない道の真ん中を走る車が多いから、危ないと感じることが少なくない。そこをレンタサイクルでのんびり走る人や、ロードバイクで飛ばす人が行き交うから、事故が起きないのが不思議なくらいだ。
・それにしてもお盆の時期の帰省ラッシュはすごい。東京にはそれだけ地方出身者が多いということだが、それは戦後の高度成長期からずっと続いている。人口の東京集中を裏づける現象で、以前は長男が残って後を継いでいたのだが、今は少子化だから、子どもが出てしまえば、田舎には老人しかいない。消滅する市や町、そして村が増えるのは当然のことだろう。
・狭いところに住み、安い給料で休みもなく働かされ、国が恵んでくれた祭日や年中行事に同じように休暇を取る。豊かな社会とは名ばかりの、心にゆとりのない世界になったものだとつくづく思う。