・これまで何十年もCDは、大学からもらう研究費で買ってきた。書籍ではなくCDがなぜ、研究費として認められるのか。そんな疑問に対して、音楽を研究対象にしていて論文も書いていることを説明したのは、もう30年程前のことだ。おかげで書斎には2000枚程のCDが貯まっている。そのCDも、ずいぶん前から、買ってすぐにパソコンにコピーしたら、ほとんど聴くこともなくなってしまった。iTunesに入れた音樂はiPodやiPhoneやiPad、そしてSDカードなどにコピーして、車を運転しながら、自転車に乗りながら聴いている。家でも聴くのも、大概ステレオに接続したiPodや使わなくなったスマホばかりである。だからもうCDで買う必要はなくなっているのである。
・とは言え、ダウンロードで買った事はほとんどない。CDにはジャケットもライナーノーツも歌詞もついていて、それも含めて一つのアルバム(作品)だと思うからである。もっとも、本当に欲しいと思うもの以外は買わないようになった。大学を辞めて研究費をもらえなくなったこともあるが、欲しいと思うものがめったにないこともある。音樂を材料に論文を書く気もなくなったから、そんなものなのかな、とも思うし、新しい音楽やミュージシャンの中に、気に入ったものを見つけることが出来なくなったとも感じている。若者のロック離れとギターが売れなくなったことが話題になっている。ギターの老舗ブランドのギブソンが倒産したのは、音楽の好みが変わったことが原因だとも言われている。
・そうなると、すでに所有している音楽だけをくり返して聴いていると思われるかもしれないが、必ずしもそうではない。最近の発見は、YouTubeなどにCDとしてはほとんど持っているミュージシャンのライブを中心にしたビデオクリップがたくさんあることだった。たとえばボブ・ディランには"Sad Eyed Lady Of The Lowlands"という名のチャンネルがあって、古いものから最近のものまで、ライブを中心にした動画や音源がリストアップされている。画像も音質もさまざまだが、毎日のように新しいものがアップされるから、追いかけるだけでも忙しい。
・しかもそんなチャンネルは無数にある。たとえばピンク・フロイドはその初期の作品を作ったロジャー・ウォーターが脱退して、著作権を巡る争いもあったのだが、それぞれが別々に行ったライブや、一緒に行ったものなどが大量にある。ピンクフロイドのコンサートは、音だけでなくステージに映し出される映像も魅力だったから、ただ聴くだけでなく同時に見入ってしまうことも少なくない。
・YouTubeのチャンネルには、ミュージシャンがオフィシャルとして出しているものもあるし、そうでないものもある。ヴァン・モリソン、U2 、ジャクソン・ブラウン、ニール・ヤング、ライ・クーダー、パティ・スミスなどなど、探しているとおもしろいものが次々見つかって飽きることがない。これではもう買う必要もないかも、と思ってしまうほどである。
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怪我をして去年の日本公演をキャンセルしたエド・シーランの4月のライブが、さっそくアップされた。大阪でのもので、2時間弱、たった一人でギター一本でやるパフォーマンスは、まるで会場に行っているような迫力があった。オフィシャルではないから、映像は最前列の右に固定されていたが、音も映像もすごくよかった。このチャンネルには外のミュージシャンの日本公演を撮ったものが数多くある。