2023年7月30日日曜日
旅行者には円安がよくわかるはず
・たとえば球場内でのビールの値段は16ドルで、円に換算すると2200円ほどになります。大きいとは言え紙コップ一つですから、買うのを躊躇したりする人も多いです。バイキング形式のレストランは35ドルですから5000円にもなりますし、スタンドで買う食べ物も2000円ぐらいはざらのようです。大谷選手のユニフォームは150ドル前後しますし、帽子だって50ドルもします。入場料を払い、飲食をして、お土産にユニフォームをということになると、一人でも数万円で、家族で行ったりすれば、10万円を超える出費になってしまうのです。
・アメリカは好景気が続いていますから、物価の上昇はすさまじいようです。しかし、収入も増えていますから、暮らしている人たちにとっては、それほど驚くことではないでしょう。ところが日本人にとっては円安で1.5倍ほど多く払わなければなりませんし、上がりはじめたとは言え、日本の物価はここ10年以上、ほとんど変わらなかったのです。もちろん賃金だって上がっていませんから、実質的には、ここ数年で、日本人にとってアメリカの物価は4倍にもなったということになります。
・逆に日本にやって来る旅行者たちにとっては、日本の物価の安さが大きな魅力になります。何しろ1コインで昼食が食べられたりして、しかもおいしいときたら、いろいろ食べ歩きもしたくなるでしょう。コンビニは24時間開いていて、いろいろな品物が満載です。100円ショップも驚くほどの値段と品数です。
・アメリカに住む友人家族が来た時にも、日本の物価の安さが話題になりました。ちょっといいとか面白いと思ったものを次々と買って、こちらは驚くやら呆れるやら。コロナ前には中国人の爆買いが話題になりました。それをインバウンドによる景気回復などと言って喜んでいていいのかと思いました。
・もちろん、裕福な外国人観光客目当てに、ばか高い値段をつけるといったこともあるようです。河口湖周辺のホテルや旅館でも、1泊4、5万円といった料金を付けるところがあります、他方でコンテナを改造した宿泊施設なども増えて、観光客も様々になっています。毎週通うスーパーのレジの人と話をすると、外国人の客が増えているようです。素泊まりの安いところに泊まって、食事はスーパーで調達。若い人たちにとっては、安く旅行が楽しめることでしょう。
・最低賃金がやっと1000円を超えたといったニュースがありました。最近の物価高で食事も満足にできない人が増えていると言われています。外国人には安いと驚かれる品物も、収入がさほど増えない人にとっては、最近の物価高で死活問題になっているようです。税収をどうやって増やすかばかり考えている政府にとっては、目に入らない存在なのでしょう。
2023年7月24日月曜日
富士山はなぜ文化遺産なのか
上垣外憲一『富士山 聖と美の山』(中公新書)
・今年は富士山が世界遺産に認められて10年になる。コロナ禍で、一時的に減ったとは言え、最近は海外からの旅行者が目立っている。日本に来たら富士山というのは定番で、次は京都といった旅程を組んでいる人も多いのだろうと思う。そう言えばコロナ前は中国人の団体客が目立っていたが、今は世界中からやってきているようだ。富士登山をする人、河口湖で自転車に乗って、あるいは歩いて楽しむ人など様々だ。
・ところで富士山は世界文化遺産だが、最初は自然遺産として申請をした。ところが、世界の山に比べて特に秀でているわけではないことや、開発が進みすぎていること、あるいはゴミが目立ち、トイレの設備が少ないことなどを理由に却下されたのである。確かに火山の独立峰で富士山より高い山は世界にいくつもある。富士山が特別の山であるのは、日本人にとってだけなのである。
・で、それならと文化遺産で再申請して、やっと認められたのである。そもそも世界遺産に申請することに批判的だった僕は、いったい富士山のどこが文化遺産なんだと思っていた。そんな疑問もあって、上垣外憲一の『富士山 聖と美の山』を買ったのだが、読まずに積んでおいて、10年経ったというニュースを聞いて改めて読む気になった。「はじめに」で出てくるのは以下のような文である。
富士山は、日本列島という人口も比較的稠密(ちゅうみつ)な、文化的な伝統にも奥深いものを持っている国に位置している。当然、この偉大な山とその周辺に住む人々との間に様々な形での交流が生まれてくる。・読んでみると、確かにその交流が長い歴史を持っていることがよくわかる。富士山にかぎらず山に対する信仰は、奈良や平安の時代からあった。おそらくそれ以前の縄文の頃から、山の近くで暮らす人にとって、山は神様の住むところとしてあったのだろう。そのような基盤があって平安時代以降になると、歌に詠まれたり、絵に描かれたりし、また様々な伝説が生まれることになった。修験道も盛んになって白山などの山が開かれたが、富士山にも長い歴史があったようだ。
・聖徳太子が甲斐の黒駒に乗って富士山を飛び越えている「聖徳太子絵伝」、雪舟が描いた「富士三保清見寺図」狩野探幽「富士山図」、そして江戸時代になると北斎や広重などが浮世絵に描くようになる。「更級日記」や「十六夜日記」「伊勢物語」でも語られ、「古今和歌集」や「新古今和歌集」にも詠まれた和歌が載っている。そこには盛んに噴火を繰り返した平安時代と、穏やかになった鎌倉時代の対照が描きだされている。参勤交代をした大名が見た富士山、朝鮮通信使にとっての富士山、そして富士講で盛んになった庶民たちが登った富士山。この本を読むと、時代によって語られ、詠まれ、描かれる富士山はさまざまだが、途切れることなく注目され、崇められてきたことがよくわかる。
・明治になると富士山にはナショナリズムといった思想がかぶせられる。あるいは日本にやってきた欧米人が語るようになる。そして戦後にリゾート地となった富士山。確かに文化遺産と言えるかな、と認識を新たにした。とは言え、五重の塔や鳥居越しに見える富士山に人気が集まるのは、外国人が好むとは言え、陳腐すぎて、なんだかなーと思ってしまう。
2023年7月17日月曜日
陶芸その後などなど
・家の中にニホンミツバチが入ってきた。叩いて潰しても次々入ってくる。外に出てみると、ログと屋根の庇の隙間で盛んに飛び回っている。庇の中に巣を作っているのだろうが、そこからどういう経路で家の中にはいってくるのか。分からないので、とにかく追い出して、巣作りをやめさせようと思った。防虫スプレーを何日かかけ続けたら蜂はいなくなった。また戻ってこないように、隙間をコーキングして塞ぐことにした。その時に、ログに交尾中の亀虫がいることに気がついた。秋に出るのと違って緑色できれいだが、臭いのは一緒だろうと思って、どけずに写真だけ撮った。
・ニホンミツバチは希少な生き物だから、家の中にはいってこなければ放っておくのだが、中に入って来られるとそういうわけにはいかない。実際つぶしたり、追い出したりした時に三つほど刺されてしまった。そう言えば、同じところに巣を作ったことが以前にもあった。しかしその時は、スズメバチが襲ってきて、すぐにミツバチはいなくなった。あるいは、これもどこから入ったのか風呂場に大集団で密集していることもあった。巣箱を作ったら、そこに居着くのかも知れないが、とてもそんなことをする気にはならない。どこか別のところに新しい巣を作って生き延びてほしいけれども、どうだろうか。
・ところで、陶芸を初めてひと月ほど経った。作ったものを乾かして素焼きをし、釉薬をかけて本焼きをした。初めてにしては上出来だ。もっとも、ろくろはまだまだうまくできないでいる。粘土をろくろの中心に置く「土殺し」がうまくできないし、力の入れどころがわからないからいびつになったり、厚いところや薄いところができてしまう。小鉢や灰皿程度なら形になるが、筒状に深く作るのができないでいる。で、ビールジョッキは手ろくろで作ることにした。
・釉薬を緑色が出るものにしたが、茶色が勝っている。角度や光の加減で、緑色に見えなくもない。最初にしては上出来だろうと自画自賛。できたものをさっそく使ってみた。ミルクを泡立てる器は、少し小さいと思ったが、外に飛び散ることもなく、きれいに泡立った。ビールジョッキはきめ細かい泡になったが、上をすぼめてしまったのでちょっと飲みにくかった。もう少し大きいのを、もう一度作ることにした。小鉢もなかなかいい。というわけで、ここのところ毎日のように使っている。
2023年7月10日月曜日
大谷報道は疑問だらけ
・大谷選手の活躍が華々しい。ホームラン王どころか三冠王も射程圏内にあるし、投手としても、後半戦の成績次第ではサイ・ヤング賞も可能性がある。まさに無双状態といってもいいほどである。そんな状態だから当然かも知れないが、テレビのワイドショーなどは朝昼夕と「今日の大谷」をやっている。新聞のテレビ番組欄を見る限りだが、他に取り上げるニュースはあるだろうに、何なんだ?と言いたくなった。
・そんな喧騒はどうでもいいが、大谷選手についてのニュースで気になるのは、フリーになった時の契約金や年数がどのくらいになるかばかりだ。これはもちろん、アメリカでの発言が多いのだが、5億ドルで10年以上の契約が当たり前といった意見がほとんどなのである。僕はこのような論調に、大きな疑問を感じてしまう。
・大谷選手は二刀流をいつまで続けられるのだろうか。それは本人にも分からないことだろう。もし10年以上の長期契約をして、途中で投げられなくなったり、打つ方もさっぱりだったり、大けがをしてシーズンを不意にしたり、ケガで休みがちになったりしたら、すぐに不良債権だと批判されてしまうのである。その見本になる選手はエンジェルスにもいるし、多くの球団に溢れている。
・わーわーと大げさに騒ぎ立てて人々の注目を集める。それがメディアやそこで飯を食っている人たちの常套手段であることはアメリカも日本も変わらない。もっとも、人間の価値はお金が決めるというのがアメリカの基準だから、本気にそう思って発言している人も少なくないだろう。しかし、大谷選手は賢いし、お金のためにやっているわけではないと公言しているから、こんな契約はまず結ばないと思う。そもそもエンジェルスと契約する時だって、もう数年経てば高額な契約金と年俸を手にするのに、と言われたのである。
・で、彼はエンジェルスとは再契約をしないと僕は思っている。選手同士では仲良く、楽しくやっているが、GMやオーナーをどこまで信用しているか怪しいからである。21年の年俸は、GMの大谷に対する評価が低くて、キャンプまでこじれた。だからMVPをとって手の平返しをしたってもう遅い。大谷選手はそんなふうに思っているのではないだろうか。もちろんプレイオフに勝ち残って、リーグ優勝戦やワールドシリーズに進んだとしたら、話はまた違ったものになるだろう。ただし、残念ながらそこまでの力はエンジェルスにはない。
・大谷選手はとにかく、ワールドシリーズまで行って、そこで優勝したいのである。だからここと思ったチームを選択して、3年ほどの契約をするのだと思う。もちろん年俸額は最高だから、払える球団はかぎられてくる。今年の成績を見る限り、ワールドシリーズに行く可能性の高いチームは、ア・リーグならタンパベイ・レイズ、テキサス・レンジャーズ、ナ・リーグならアトランタ・ブレーブスだろう。しかし、これらのチームは戦力が整っているから、おそらく別のチームになるはずだ。自分が加わればもっと強くなり、高額年俸を複数年払える財政基盤があって、自分がチームを代表するスター選手になれる球団を探せばいいのである。
・そうなると行けそうな球団はどこか。ジャッジやコールのいるヤンキースやカーショーやベッツのいるドジャース、ゲレーロJr.
のいるトロント・ブルージェイズは外れるし、シャーザーやバーランダーがいても勝てない金満メッツは問題外だ。ソトやマチャド、タティスJr.、それにダルビッシュがいても弱いパドレスもダメ。そうなると残る球団はいくつもない。財政基盤がしっかりしていて、スター選手はいないがそこそこ強い。
・僕はサンフランシスコかボストンと予測している。もちろんここには希望的観測という側面もある。しかし、もしそうなったら、アメリカのスポーツ・メディアは仰天して大騒ぎすることだろう。とは言え、6月末からエンジェルスは負け続けていて、プレイオフ進出の可能性が消えかけている。何しろトラウト始め故障者続出なのである。トレード話が再燃しているが、これは大谷選手には決められない話だから、どこに行くかは分からない。
2023年7月3日月曜日
ジャニーズ騒動に見るメディアの正体
・メディア、とりわけテレビのひどさは改めて指摘するまでもないことだが、ジャニーズ騒動での対応には、ここまで来たかと思わせられた。ジャニーズ事務所のオーナーだったジャニー喜多川による、自らスカウトした少年たちに対する性的虐待が、長い間にわたって行われてきたのに、一部の週刊誌を除いて、大半のメディアが不問に付してきた。それが話題になったのはイギリスのBBCが取り上げたからである。 ・喜多川がプロダクションを作ったのは1960年代後半で、最初のタレントは4人組みの「ジャニーズ」だった。そこから「フォー・リーブス」や郷ひろみなどの人気者を出して台頭し、80年代以降には「たのきんトリオ」「シブがき隊」「少年隊」「光GENJI」「SMAP」「TOKIO」「嵐」といったアイドル・グループを排出して、日本の芸能界を支配し続けてきた。ここにはグループから独立して、現在でもテレビで見かける人気者たちが大勢いる。 ・ジャニー喜多川による性的虐待を明るみに出せば、テレビは途端に、番組作りに困ってしまう。音楽やドラマ、あるいはバラエティーといった番組に出演するジャニーズ事務所のタレントは、それだけ大きな存在になっていた。しかもテレビだけでなく、新聞も雑誌も、この問題を隠し、遠ざけてきた。理由はおそらく、損得勘定によるものだったと思う。その根深さはBBCが大きく取り上げても、多くのメディアが無視し続けてきたことからもわかることである。 ・ネットで大きく取り上げられるようになってやっと、テレビや新聞が扱いはじめたが、まるで他人事で、自社がなぜ不問に付してきたかといった釈明をするメディアはほとんどない。このような態度はもちろん、今回に始まったことではない。原発広告と福島原発事故について、東京オリンピックと電通支配について、そして政権に対する忖度の姿勢について等々、取り上げたら枚挙に暇がないほどである。 ・テレビも新聞も、自らが社会的に影響力のある存在であるのに、そのことに対する自負も矜持もない。もちろん一貫した態度は自己保身と金儲けだけだから、責任の自覚とは無縁である。テレビの視聴率は落ち、新聞の発行部数は減り続けている。そうなればなるほど、目先の利益や保身に走るから、もう救いようのない泥沼に落ちていると言わざるを得ない。 ・しかしこのような状況はメディアにかぎらない。日本全体が今、泥沼に落ち込んでいる。で、そのことを見て見ぬふりをしているから、救いの道は見つけようがない。暗澹たる気持ちをずっと持ち続けているが、暗闇は増すばかりである。 |
2023年6月26日月曜日
陶芸を始めました
・我が家にはパートナーが製作する陶芸の工房があります。ここに引っ越してきた時に新築しましたから、もう20年以上使われています。パートナーはここでせっせと作品を作り、個展を開き、陶芸教室をおこなってきましたが、僕は陶器の製作はもちろん、粘土に触ることも一度もなかったのです。なぜなのか。 ・大工仕事や薪割りなど、他にやらなければならないこと、やりたいことがありましたし、仕事で東京に通勤して、授業の準備や校務、研究活動などもありました。ですから仕事を辞めたら始めるか、と思っていたのですが、それからすでに6年も経ちました。作りたいものが見つからないし、パートナーの領域にあまり踏み込みたくないといった気持ちがあったのかもしれません。 ・やりはじめたきっかけは、エスプレッソに入れるミルクを泡立てる陶器の口が壊れたことでした。くっつけて今でも使っていますが、自分で作ってみようかと思いはじめたのです。梅雨にはいり、自転車も山歩きもままならなくて、少し退屈だったということもありました。で、始めるぞ!と宣言したのです。 ・ろくろの手ほどきを受けて始めましたが、土は言うことを聞いてくれません。YouTubeで見ると、土殺しという、粘土をろくろの中心に置く作業をいとも簡単にやっているのですが、これがなかなか難しい。それでも何とか、小鉢とミルクを攪拌する器を作り、分厚いところを削って、それらしい形にしました。次は手びねりで灰皿とビールジョッキ。余った粘土で象を作りましたが、これは中を空洞にしなければ爆発してしまうと言われて、潰してしまいました。 ・作ったものは乾かし、素焼きをし、釉薬をつけて本焼きとなります。さてどんなものに仕上がるか。それにしても、ろくろの作業がうまくできないのは心残りです。ですから、これからも泥遊びに精出そうと思っています。70歳の手習いですが、飽きずにいつまで続けることができるでしょうか。それにしても泥遊びの後は当然、汚れます。この後片づけがなかなか面倒で、やるたびにパートナーに叱られています。そんなにきれいにしなくてもと思いますが、ここは彼女の聖域ですから、文句を言わずに、跡を濁さずと心掛けています。 |
2023年6月19日月曜日
奇妙な読書経験
黒川創『彼女のことを知っている』(新潮社)
・『日常の哲学』は友人の庭田茂吉が書いたものである。彼は哲学者でメルロ・ポンティの現象学などを専門にしている。僕にはよくわからない分野だが、彼とは学生の頃から勉強会などもしていて、一緒に話すことは楽しかった。ただし話の中身は、身の上話や下世話なものであることが多かった。極めて話し上手で、こんなことをテーマに本を書いたら売れるのに、とよく思った。最近はめったに会わないから、そんな話が懐かしく感じられるのだが、「日常」ということばが題名についた本を見つけて、読んでみようという気になった。 ・読みはじめたら、まるで話を聞いているような感じになった。映画やテレビ番組、あるいは新聞記事から取られた宇宙人に盗まれた街や対顔恐怖症、イセエビにアオリイカが話題になり、またカフカや鶴見俊輔、そして田中小実昌などが取り上げられる。話は時に何度も繰り返され、別の話題に飛び、深く哲学する。あー、たしかに、彼の話はこんな感じだったと懐かしくなった。 ・特に面白かったのは、新聞記事に載ったてんぷらの話だ。さつまいも(90円)、クジラ(100円)、大エビ(200円)………と並べられているところにおばちゃんの笑顔がある。その写真に美しさを感じ、心の底からしびれたというのである。で、その話を頼まれた講演会の話題にしたのだが、話の落ちが作れなくて大失敗をしたという落ちがついていた。うん、彼ならやりそうなことだと、笑ってしまった。 ・黒川創の『彼女のことを知っている』は小説である。物書きを仕事にする中年の男が、映画のシナリオを頼まれた話から始まる。しかしその仕事がはかどらないうちに、話は、京都の喫茶店でアルバイトをした自分の少年時代のことになる。僕はその喫茶店の常連だったから、その部分は実話として読むことになった。70年代初めにできた自由を模索する若者たちがたむろする空間で、僕の知らない内部事情なども興味深かった。ところが、この本はあくまで小説なのである。読んでいて、その辺がごっちゃになって奇妙な感覚に襲われた。 ・主人公には高校を卒業して大学に行く娘がいて、その人生の大きな転機に一人でキャンプをしたいという。父は娘一人ではと心配して、近くで見守ることにするが、娘とセックスのことについて、自分の経験をもとに話をする。それがまた、京都での話になるから、虚実の区別がわからなくなる。実際彼には娘がいるのだろうか。そんなことを考えながら読んだ。 ・カトリーヌ・ドヌーブの全作品をまとめて本にするという仕事の部分も、やたら具体的すぎて不思議な感じがした。もちろん、小説の上での話だから、こんな本は出版されていない。しかし、映画のシナリオの話と同様、これは実際に取り組んで実現しなかったことではないのか。著述で得る収入は不定期だったろうから生活が苦しかったのではないか。そんな余計な心配をしながら読むことになった。 |
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12月 26日: Sinéad O'Connor "How about I be Me (And You be You)" 19日: 矢崎泰久・和田誠『夢の砦』 12日: いつもながらの冬の始まり 5日: 円安とインバウンド ...
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・ インターネットが始まった時に、欲しいと思ったのが翻訳ソフトだった。海外のサイトにアクセスして、面白そうな記事に接する楽しさを味わうのに、辞書片手に訳したのではまだるっこしいと感じたからだった。そこで、学科の予算で高額の翻訳ソフトを購入したのだが、ほとんど使い物にならずにが...
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・ 今年のエンジェルスは出だしから快調だった。昨年ほどというわけには行かないが、大谷もそれなりに投げ、また打った。それが5月の後半からおかしくなり14連敗ということになった。それまで機能していた勝ちパターンが崩れ、勝っていても逆転される、点を取ればそれ以上に取られる、投手が...