2013年7月22日月曜日

戦前の日本に戻っていいのだろうか?

・自民党の選挙スローガンの「日本を、取り戻す。」を見るたびに、頭に「戦前の」を足した方がぴったりすると思っていた。自民党の憲法改正(悪)案は、まるで明治憲法の復活のようだし、自衛隊を国防軍にするとか、兵士が出兵を拒否したら軍法会議で死刑か懲役300年だといった話が平然と公言されたからだった。ぞっとするようなおぞましい話だが、そんなことがたいした議論にもならずに、参議院選挙で自民党が大勝した

・昨年の衆議院選挙の時に、僕は悪夢の選択だと書いた。どっちにしても悪夢にしかなり得ないのなら、よりましな方を選択すべきだという主張した。その時一番問題だと思ったのは原発事故の終息と原発の廃止に向けて、少しでも積極的な政策を掲げる所に投票すべきだと思ったからだった。しかし結果は、自民党の復活と民主党の壊滅的な敗北だった。

・で、勢いを盛り返した自民党が歩き始めたのが、原発再稼働に向けた道であり、憲法の改悪であり、借金財政をさらに悪化させるアベノミクスだった。憲法は近代国家の土台として政治権力の暴走を阻止するために作られたもののはずだが、自民党案には、表現の自由を制限したり、道徳的に国民を縛り統制する条項が追加されている。憲法が何であるかをはき違えた、戦前への回帰があからさまな内容と言えるものなのである。

・安倍政権の人気を支えているのはアベノミクスと名づけられた積極的な経済政策にあると言われてきた。確かに表面的には円高が是正され、株が上がり、景気が改善されはじめて来たように見える。しかし、株の上がり方はどう見たってバブルだし、多額な国債の発行は日本が抱える借金を増やすばかりなのである。この数ヶ月で2倍にも3倍にも上がった株があるから、確かに儲けた人や企業はあるのだろう。デパートの売り上げが伸びたのは株でもうけた人たちが買う貴金属や高級ブランド品によるところが大きいようである。一方で、物価がじりじりと上がり始めている。

・安倍首相は選挙期間中に「日本を、取り戻す」一つとして、60年代から80年代までの経済成長をした元気な日本をあげていた。しかし、後進国から先進国への過程にあった時代と、世界第3位の経済大国になって、成熟した社会になりつつある現在との違いを全く無視した発言には、呆れるほかはないほどである。
・必要なものはほぼ手に入れることが可能になり、少子高齢化がますます進行する社会で、いったいどうやって経済的な高成長を実現させるのか、そもそも経済成長が必要なことなのかどうか。アベノミクスの行き着く先は、バブルをもう一回はじけさせることでしかないのではと危惧せざるを得ないのである。

・自民党の政策は原発にしても経済にしても、そして憲法問題にしても、地獄への道を突き進む動きにしか思えないのに、なぜそれが支持されるのだろうか。誰も戦争なんかしたかったわけじゃないのに戦争にまっしぐらに突き進んでしまった、戦前の日本の状況に酷似していることを指摘する人は少なくない。空気には逆らえない、怖い現実は見たくない、遠い未来よりは目先の安心、といった気分が蔓延していて、その空気を取り払う風が吹き込めない。そんな息苦しさを感じる選挙結果だった。

0 件のコメント:

コメントを投稿

unknownさんではなく、何か名前があるとうれしいです。