2013年9月8日日曜日

福島、シリア、そしてオリンピック

・福島第一原発の汚染水問題が大きく取りざたされている。東電が発表したのは参議院選挙後で、メディアもまるで最近出てきた問題であるかのよう扱っている。しかし、地下水が汚染されて海に垂れ流される危険性は、事故当時から指摘されていたことだった。小出裕章さんは事故直後から、原発の周囲と底を分厚い鉄板で覆う必要性を強く主張していたが、東電も政府も本気で取り上げようとはしなかった。費用の問題だったようだ。危険性の回避を最優先するという原則のなさが、事故以前だけでなく、現在までもずっと続いている。責任の所在を曖昧にする態度が、結局は事故の対応をいい加減にしていることは明らかだろう

・原発を冷やすために注入した汚染水が周辺のタンクに貯められている。次々増えているが、ここからも水漏れがあいついでいる。いい加減なつくり方をしたせいだが、この汚染水についても小出さんは、大型のタンカーを用意して柏崎の原発まで運んで処理をすべきだと言っていた。事故当時なら緊急事態として、海外からも了承されたと思うが、今では輸送時の放射能流出の危険性などから、反対されてできないだろうと言われている。場当たり主義的で、何の展望もない事故対策に、政府がやっと介入する姿勢を見せているが、その政府にだって、どうすべきかについて根本的な原則があるわけではない。

・シリアの内戦で政府軍が化学兵器を使ったことが報道された。オバマ大統領が即刻反応して、人道的な理由からシリア政府に対する攻撃の必要性を力説した。それではブッシュと一緒ではないか。そんな感想をもったが、イラク攻撃の時とは違って、イギリスは議会が反対したし、ロシアや中国をはじめとして、シリア攻撃に対する批判の方が強いようだ。アサドの圧政は批判すべきものとしても、反政府軍の方にも非人道的な行動はあって、目には目、歯には歯というハムラビ法典の世界だなと思う。それだけに、一方を悪玉にして攻撃するのは、あまりに短絡的に過ぎるといわざるを得ない。

・武力介入したってうまくいかないことは、イラクやアフガニスタン、そしてリビアなどでくり返されているのに、なぜオバマはこれほどに積極的なのだろうか。結局、誰が大統領になっても、世界中を管理する警察としてのアメリカの役割について、疑問を呈することができないのだと思うと、世界の現実はもちろん未来について、悲観的になってしまう。今までオバマに無視されていた安倍首相が、いち早くオバマ支持を打ち出したことで、ロシアで行われたG20ではいの一番に会談をして、支持を要請したようだ。相変わらずのアメポチかと思うと、うんざりしてしまう。

・その安部は、ロシアに行った後、G20を中座して、政府専用機でアルゼンチンのブエノスアイレスに出かけて、2020年オリンピックの東京招致に向けて後押しをしたようだ。専用機に乗って世界中を飛び回るのがこれほど好きな首相も珍しい。日本の原発を売り込んだり、東南アジアに中国包囲網を作ろうとしたりと積極的だが、原発事故の現状や対中国、韓国との関係、あるいは東南アジア各国との関係について、いったいどう考え、何をしようとしているのか。これほど危なっかしい首相もいないという気がする。

・メディアはオリンピックの東京招致に向けた応援番組や記事が目についた。一方で、G20の席に安倍首相がいなくても、それを批判的に取り上げるメディアは皆無である。3.11以降の大政翼賛会的姿勢がますます露骨になって、うんざりするやら、ぞっとするやら。オリンピックにうつつを抜かしている時ではないだろう。そう何度も呟いてしまった。だから、2020年のオリンピックが東京に決まったというニュースを見たときには、中止になった戦前のオリンピックの時代の再来かと、暗澹たる気持ちになった。

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