・「特定秘密保護法案」が自民公明の強行採決で、衆議院、そして参議院で可決された。とんでもない悪法で、世論の反対はもちろんだが、さまざまな人たちが反対の声をあげ、デモや集会がいくつも開かれた。安倍政権は、そんな反対の声を無視して採決を強行したのだが、そんな姿勢が選挙での大勝と支持率の高さによることは間違いない。とんでもない政権を誕生させてしまったと後悔しても、後の祭りというものである
・なぜ今、こんな法律を急いで可決する必要があるのか。それを考えた時に思うのは、この法律が、安倍政権になって突然現れてきたものではないということである。古くは1987年に「スパイ防止法」が議員立法として提出され、廃案になっている。その後も、国家秘密の管理体制を強めようとする動きは各省庁の中で続いていて、それは民主党が政権を取った期間も行われていた。つまり、この法案は、政治家や政党よりも、官僚たちが作りたくてしょうがなかったものだということだ。さらに言えば、アメリカの要請だろう。
・「特定秘密保護法案は、第一号「防衛に関する事項」、第二号「外交に関する事項」、第三号「特定有害活動の防止に関する事項」、第四号「テロ活動防止に関する事項」から成り立っている。これは特定秘密の業務を行うことができる者に限定された法律だといった弁解もなされているが、第三号の「特定有害活動」は「有害」であることを誰が決めるのか、第四号の「テロ活動」も何を指して「テロ」というのかが曖昧なままにされているのが問題だと言われている。
・その点の怖さがあからさまになったのが、石破自民党幹事長がブログに書いた、国会議事堂周辺で行われていたこの法案に対する反対行動をさして、「単なる絶叫戦術のテロ行為」と批判したことである。この時期にデモをテロと言ったことは、この法案の目的がどこにあるのかを明確にしたと言えるが、反対の声に対して「聞く耳を持たぬ」といった態度にも底知れる怖さを感じさせた。
・国家が重要な秘密を守るための法律は多くの国が持っている。「特定秘密保護法案」の必要性を説く大きな理由だが、それはまた、「情報公開」や個人の「表現の自由」と両立させなければ、国家による国民の一方的な押さえつけになってしまうものである。しかし、「情報公開法」が施行された時に、各省庁で都合の悪い文書を事前に廃棄してしまったり、重要な会議の議事録がなかったりといった不祥事が露呈したのは記憶に新しいことで、「情報公開法」は不整備のままである。
・「特定秘密保護法」は実際に機能させることよりは、秘密の漏洩や国家批判を事前に押さえつける役割の方が強いという指摘がある。疑いをかけて捜査をしやすくすることができるし、公務員はもちろん、国民を萎縮させる働きがある。橋下市政の大阪では、すでにそのような空気が蔓延しているという指摘もあった。
・マスコミの動きが遅かったのも怪しいが、民主党政権の時には頻繁にしていた内閣支持率の調査が、最近ではあまり行われていないのも何とも不思議な気がする。安倍内閣の支持率は大きく下がるだろうが、法案が通ってしまった後では何の役にも立たないだろう。消費増税が決まり、社会保険制度が改悪された。しかし諦めずに、この政権を倒すために大きな声をあげ続けることが大事で、そうしなければますます、息苦しい世の中になるばかりだと思う。