2020年1月27日月曜日

暖冬と雪

 

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forest164-2.jpg・雪らしい雪がやっと降った。小さな雪だるまがつくれるほどだが、冬らしい景色になったのは間違いない。しかし、すぐに暖かくなって、雪は数日で消えた。一度積もると春まで溶けないのが普通だったから、やっぱりいつもとは違うと感じてしまう。そもそも、この雪は南岸低気圧によるものだから、普通なら3月になってから降るものなのである。そう言えば、春一番としか言いようがないような強い南風も吹いた。ただし、立春前だから、気象庁も春一番とは言わなかった。この冬は全国的に少雪で、開場できないスキー場がかなりあるようだ。

forest164-3.jpg・去年の暖冬で薪に余裕があるからと、原木は3立米にして12月初めには割り終わった。で、追加の3立米を注文したのだが、在庫がなくて、運んでもらったのは1月になってからだった。さっそく玉切りとまき割りを始めたら、数日で雪が降った。雪が積もるとトラックが入らなくなるから、まさに間一髪だった。2回目も3立米で、一昨年から毎年、1立米ずつ減らしている。暖冬が続けば、もっと減らしてもいいかもしれないが、急に寒い冬になるかもしれないから、このぐらいは備えておかなければいけないだろうと思う。振り返ると、2年続きの暖冬だが、その前の2年は厳しい寒さだった。
・薪割りを始めたら自転車は休み。天気が悪かったせいもあって12月からあまり走っていない。例年1月から3月ぐらいは休んでいるが、今年は暖かい日もあるから、たまには走らせようと思っている。2月には屋久島に行って、縄文杉まで往復20km程を歩こうと思っているから、体力をつけておかなければならない。

forest164-4.jpg・WifiはNTTの光と契約しているが、ルーター一つでは部屋中で受信できないので、2階にもう一台敷設している。Appleの「Airmac Timecapsule」で、データのバックアップができる3テラバイトのハードディスク付きだった。もともと研究室で使っていたもので5年ほどになるが、しばらく前から自動のバックアップができなくなっていた。そこでハードディスクの初期化をすると、Wifi機能までがダメになってしまった。で、新しいものを探していると、Googleが出しているのを見つけた。デザインがいいと思ったし、評判も悪くないようだから、すぐにAmazonで購入することにした。設定は専用ソフトをダウンロードしてパソコンではなくiPadからと、いかにもGoogleらしかった。
・パートナーが使っていた「Macbook air」の調子が悪くて、これも新しいものを買った。形はほとんど変わらないが、接続が「USB TypeC」だけになったから、モニターやUSBと接続するためのハブを買う必要があった。新しいものを買うたびに、付属機器やコードが必要になる。そして、今まで使っていたものが不要になる。そう言えばiPhoneやiPadも今売っているのは、僕が使っているものとは違っているようだ。面倒だし、無駄なことをやってるなとつくづく思った。

・と書いたら、日曜日に15cmの雪が降って、今日も午後から大雪の予報が出ている。しかし、その後、この時期にはありえない10度を超える日が続くようだ。これはもう3月末から4月にかけての陽気で、常識が通用しなくなっている。そう言えば、冬でも暖かいスペインのアンダルシアや地中海沿岸で大雪が降ったようだ。温暖化への対応は、もう完全に手遅れなのかもしれない。

2020年1月20日月曜日

パソコン・ソフトと新聞

 

・マッキントッシュを使い始めて、もう30年になります。ガリ版や和文タイプ、そして日本独自のワープロ機で個人誌を出していたので、「DTP(卓上印刷)」ができるというふれこみに、思わず飛びついてしまったことを今でも鮮明に覚えています。大阪の日本橋にある小さな店で、並行輸入で手に入れましたが、本機(SE30)とプリンター、スキャナーにソフトとフォントを合わせると120万円ほどしました。

・日本語で使える紙・誌面を編集できるソフトには「EGWORD」と「EGBOOK」があって、ワープロとは違って、縦書きができるなど、ずいぶん便利で重宝しました。しかし、より高度な編集ができるアルダスの「Pagemaker」が日本語対応になったときから、「EGWORD」と「EGBOOK」は使わなくなりました。「Pagemaker」がアドビに買収され、しばらくすると「In Design」に変更されましたから、それ以降ずっと、去年まで「In Design」を使い続けてきました。

・ソフトは今ではダウンロードをして購入します。しかも、月とか年毎に使用料を払うという形式になっています。バージョン・アップするたびに買い直すのにくらべれば便利ですが、古いまま使えなくなった分だけ、出費もかさむようになりました。しかも、アドビはソフトの価格が単体では高額で、いくつものソフトを抱き合わせで買わせるようになっています。ほとんど使わないし、ダウンロードさえしないソフトまで買わなければならないことに、ずいぶん腹を立ててきました。

egworduniversal2.png ・「In Design」のほかに編集機能のあるソフトはないものかと探すと、懐かしいEGWORDという名前が目につきました。「egword Universal2」という名で「物書堂」が開発し、販売しています。2008年に発売中止となりましたが、2018年に復活したということでした。さっそく試用版をダウンロードして使ってみると、「In Design」でやっていたことのほとんどができることが確認できたので、購入することにしました。値段は8000円で、学割でも毎月2100円もかかるアドビに比べれば、ただみたいな値段でした。少なくても、大きなバージョンアップでもしない限りは、新たに買い直すことがないからです。

kawasemi2.png ・ところでマッキントッシュは、システムを32から64ビットにした「Catalina」という名のシステムにバージョン・アップしました。それによって使えなくなったソフトが続出したのですが、そのなかに日本語入力として使っていた「JustSystem」の「ATOK」や「マイクロソフト」の「Office」がありました。しかも対応版はやはり年月決めで購入することになっています。ですからこれもやめて、日本語入力は「物書堂」が開発した「かわせみ2」に変えました。4400円ですから、年額6000円の「ATOK」に比べれば格安です。「Office」もマッキントッシュに付属する「Numbers」や「Pages」「Keynote」で代用できますから、年額1万円を超える「Office365」も買わないことにしました。

・もう一つ、長年の契約を解除したものに「朝日新聞」があります。ここ数年、その記事内容に強い不満を感じてきました。読売や産経はともかく、なぜ朝日までが政権に忖度して、強い批判をしないのか。そんな気持ちが募ってきたときに、「毎日新聞」が首相との会食をやめたという記事を目にしました。官房長官への対応とか記事についても、政権批判に方針変更をしたようでした。で、毎日新聞に変えたのですが、取り上げる記事も論調も、確かに朝日とは違うなと思いました。わが家では親の代からずっと朝日でしたから、これは大きな変更だと言えます。

・実際には、大概のニュースはネットで知ることができますから、もう新聞はとらなくてもいいのかもしれません。しかし、ネットに載る記事の多くは新聞社や出版社が出したものです。ですから、ここがつぶれたら、ニュースの発信先そのものがなくなってしまうことになります。その意味では、せめて一紙ぐらいは取り続けるのが義務だと思っています。毎日新聞は朝日と違って、購読者にはネットでの閲覧もできますから割安です。三大紙と言われながら讀売や朝日に比べると発行部数も少ないし、業績不振も何度かありましたから、一読者として応援することにしました。

2020年1月13日月曜日

奄美大島について

 永田浩三『奄美の奇跡』(WAVE出版)
島尾敏雄『島の果て』(集英社文庫)
南日本新聞社編『アダンの画帖』(小学館)


2月に奄美大島と屋久島に出かける予定にしている。厳寒期に暖かい所で過ごし始めて3年目になる。一昨年は四国、昨年は九州で、今年は南の島へということにした。沖縄には本島だけでなく、石垣島、宮古島、そして西表島にも行っている。だから奄美と屋久島にしたのだが、奄美については、田中一村と島尾敏雄、それに大島紬ぐらいしか思い浮かばなかった。しかも島尾敏雄の作品は読んだことがなかったし、田中一村の作品もアカショウビンを描いたものしか知らなかった。だから出かける前に予備知識を少しでも入れておこうと年末から読み始めた。

amami1.jpg 奄美の島々は敗戦後にアメリカの統治下となった。そして沖縄よりも早く返還されている。しかし、ぼくはこのことをすっかり忘れていた。永田浩三の『奄美の奇跡』は島の人びとが戦った返還の過程を記録したものである。奄美群島は1953年12月に日本に返還されている。だから占領されていたのは8年ほどだが、復興資金が沖縄に集中され、特産物の大島紬や黒糖も日本に出荷することができなかったから、経済は疲弊し、食料も困窮して、飢餓状態になることさえあった。本土との行き来も密航という手段に頼るしかなかったのである。だから返還の運動は占領直後から起こり、アメリカ軍の締め付けにもかかわらず、しぶとくつづけられた。
返還を要求する署名は島民の99.8%になり、くり返しハンガーストライキが行われた。米軍政府は反共を掲げて政治活動を厳しく取り締まったが、返還を願う島民の思いを行動に結びつけるうえで、共産党の働きは大きかったようだ。もっとも、返還が実現に向けて動きだすと、米軍政府に正面から立ち向かい、沖縄の返還と連携しようとする勢力は排除されることにもなった。この本を読むと、返還運動を支えた数名の人と、その人に影響され、また支えた多くの人たちの思いや動きがよくわかる。

amami2.jpg 島尾敏雄は奄美大島の南にある加計呂麻島で180名ほどの部隊を率いる特攻隊指揮官として2年近く過ごしている。米軍の船舶に体当たりする魚雷艇部隊だが、敗戦まで出撃の命令は下されなかった。『島の果て』は加計呂麻島での経験をつづったいくつかの短編を集めたものである。書かれたのは「島の果て」の1948年から「その夏の今は」の1967年まで20年に渡っている。もちろん、ほかにも作品はあって、島尾にとって加計呂麻での戦争体験がいくら書いても尽きないテーマだった。
『島の果て』には戦闘場面はない。出撃命令に備えながら、島を散策したり、島の女と恋に落ちて逢い引きを重ねたりしながら、島の様子を描写し、自分の心持ちを語る。死を覚悟し、アメリカの軍艦に突撃する準備を整えながら、何も起こらない島で、時間を潰す。自殺艇はベニヤ製で舳先に200kgを超える爆薬を積んでいる。海岸に掘った洞窟に隠していて、湿気に錆がついたりもしている。そんな艇で軍艦に突っ込むのが、なんともお粗末な行動であることを承知しながら、部隊の長としては、そんなことはおくびにも出せない。そんなことについての自問自答や、部下に対する振る舞いや、その反応などが繰り返し語られる。

amami3.jpg 『アダンの画帖』は田中一村の伝記だ。才能に恵まれ東京美術学校に進学するが病で退学をする。そこから画壇からは退いて独自な生き方をした。そんな清貧を貫いた画家の物語である。一村が奄美に移り住んだのは、返還後5年経った1958年であった。最初は南東だけでなく、北海道などにも行き、スケッチをして回る旅の予定だったが、そのまま奄美大島に移住することにした。この頃にはまだ、傑作をものにして画壇を驚かせようといった野心もあったようだ。
絵を描くため、生活費を稼ぐために見つけた仕事は、大島紬の染色工だった。5年働いてお金を貯め、3年間絵に集中する。そんな計画を立てて、その通り実践した。それが終わるとまた染色工の仕事についた。しかし貧困生活の中で体調を壊し、売る気のなかった絵を売ろうと思ったが、当てにした人からは返事がなかった。地元で絵に感銘を受け、買ってくれる人もいたが、田中一村とその作品が広く知られるようになったきっかけは、死後2年経って奄美で開かれた遺作展と、さらに5年後にNHK教育テレビの『日曜美術館』で「黒潮の画譜」として紹介された後だった。

奄美に行って、さてどこに行こう、何を見ようと思っていたが、これで行きたいところ、見たいものがはっきりした。もちろん、まだ時間があるから、もっと探してみようと思っている。

2020年1月6日月曜日

ジェスカ・フープという女性ミュージシャン

 

Jesca Hoop
"Stone Child"
"Kismet"
"Love Letter For Fire"

jesca2.jpg・ジェスカ・フープというミュージシャンは中川五郎のブログ「グランド・ティーチャーズ」で知った。特に若いミュージシャンについてのアンテナがないぼくには、彼の勧めはずい分役に立っている。ダミアン・ライス、ウォリス・バード、ミルク・カートン・キッズなどだし、ジョーン・バエズの引退やウディ・ガスリーのアルバムなどもこのブログで初めて知った。今のぼくには唯一の情報源といってもいい。

・彼のブログによればジェスカ・フープは2007年に"Kismet"でデビューしている。音楽好きのモルモン教徒の家に生まれ育ち、北カリフォルニアの原野に入植したり、情緒不安定児のリハビリ教育に携わったりした後に、音楽活動をし始めている。デビューのきっかけはトム・ウェイツの家で子どものお守りをしたことだったようだ。トムが気に入ってデモ・テープを紹介したらしい。トムはジェスカを「四面あるコインのようで、夜の湖で泳いでいるようだ」と形容した。

jesca1.jpg・聴いていて感じるのは、今まであまり聴いたことがないサウンドだし、ちょっと昔の音楽のようにも、まったく新しいものにも思えることだ。透き通った優しい声なのに、どこか棘や影がある。それはデビュー・アルバムの"Kismet"にも、最新作の"Stone Child"にも共通している。「キスメット」は「神が定めた運命」を意味するイスラム教のことばで、「ストーン・チャイルド」は「化石胎児」を意味している。そして、どの歌の歌詞も難解だ。


希望は闇の中で生きている
彼は彼女のベッドで眠り
闇がテーブルを満たすのは
希望がもたらした心痛で望みをもたない友達だ ”All Time Low"

・"Stone Child"についていくつかのレビューを読んでみた。中にはこのアルバムのテーマが「人生の残忍さ」にあると書かれたものもあった。生まれることができなかった胎児と直接関わるのはその母親だが、そこには母性や子育て、そして性差別などの問題がある。それをストレートなメッセージではなく、比喩的に歌にする。複雑な問題を複雑なままに歌いあげる。わかりにくいが何となくわかるような気がした。 jesca3.jpg・もう一枚はサム・ビームとの共作だ。そして彼女だけのアルバムとはだいぶ違っている。共演するアイデアはサムからだったようだ。タイトルのように全曲ラブ・ソングだが、二人がこのアルバムや歌に込めている思いは同じではない。レビューによると、サムは「もらった、あるいは出さなかったラブレターを火の中に入れているような」と言い、ジェシカは「終わってしまった一過性の愛のはかなさ」を表していると言っている。デュエットは会話のようなもので、共鳴する瞬間もあればすれ違いもある。なるほどと思いながら聴いた。
・それにしても洋楽についての情報が少なくなった。若い人がほとんど興味を示さなくなったせいだろう。内向きもここまでくると、そろそろ反転してもいいのではと思うが、どうだろう。内向きは音楽の好みに限らないから、どこかにきっかけがあるかもしれない。年始めの希望的観測である。

2020年1月2日木曜日

今年もよろしく

 

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本栖湖中の倉峠からの富士


2020年です
今年もよろしくお願いします
このホームページ(ブログ)も21年目になりました
暇になったのに週一の更新がしんどい
そんな気持ちにめげそうにもなりますが
まだしばらくつづけるつもりです

安部とトランプの退陣を一昨年から祈願していますが
今年こそは、辞めさせなければなりません
嘘と隠蔽でやりたい放題の政権を野放しにしたままでは
日本やアメリカだけではなく
世界が壊れてしまいます

気候変動が現実化しはじめても
格差や貧困が目に余るほどになっても
今だけ、金だけ、自分だけ
そんな風潮に変化が訪れることを願って
新年を迎える今日この頃です

2019年12月31日火曜日

目次 2019年

12月 

23日:『ポツンと一軒家』から見えるもの

16日:紅葉とお墓

09日:「おとうさん」「おかあさん」って何?

02日:フィリップ・ロス『プロット・アゲンスト・アメリカ』(集英社)

11月

25日:もううんざりしていますが

18日:『ジョーカー』

11日:一人になった母のこと

04日:それにしても雨が多い

10月

28日:立山・称名滝

21日:竹内成明『コミュニケーションの思想』(れんが書房新社)

14日:コラボの2枚 

07日:父の死

9月

30日:久しぶりのラグビー観戦

23日:大谷翔平選手に

16日:カビと腐食

09日:音楽とスポーツ 

02日:香港と韓国

8月

 26日:『新聞記者』を観た

19日:真夏の騒動

12日:猛暑はもう異常ではありません

05日: 東北も酷暑だった!

7月

29日: テレビからジャーナリズムが消えた

22日:田村紀雄『移民労働者は定着する』ほか 

15日:「れいわ新撰組」がおもしろい

08日:病にも負けず

1日:スプリングスティーンとマドンナ

6月

24日:年金だけでは暮らせないのは当たり前の話

17日:DAZNをはじめた

10日:久しぶりの海外旅行

03日:井上俊『文化社会学界隈』(世界思想社)

  5月

28日:加藤典洋の死 

21日:リハビリとメインテナンス

14日:ジョニ・ミッチェルの誕生日

07日:高齢者の自動車運転について

  4月

29日:今年のMLB

22日:黒川創『鶴見俊輔伝』(新潮社)

15日:樽の中に閉じこもる

08日:雪のない冬

01日:修理、修理!?

3月

25日:初めてのウィリー・ネルソン 

18日:ティム・インゴルド『ラインズ』(左右社)

11日:辞める人、辞めさせられる人

04日:なぜこんなひどい政権を支持するのか

2月

25日:旅から帰って 

18日:九州旅行

11日:今年は九州一周

04日:最近買ったCD

1月

28日:パトリシア・ウォレス『新版インターネットの心理学』(NTT出版) 

21日:テレビは太鼓持ちの世界

14日:平成とは

07日:閑人になって1年

01日:今年もよろしく

2019年12月23日月曜日

『ポツンと一軒家』から見えるもの

 

potsun1.png・『ポツンと一軒家』についてはすでに、見かけた人に「おとうさん」「おかあさん」と呼びかけることについての違和感を書いた。今回は内容について感じたことを書こうと思う。
・この番組はお金がかかっていないと思う。何しろ、登場するのは現地に出かけるディレクターとカメラマンなど、数名だけなのである。もちろん、スタジオでコメントをつける所ジョージと林修、それに二人のゲストの出演料はかかるが、同時間帯で人気を二分する「世界の果てまで行ってQ」に比べたら、製作費用は一桁、あるいは二桁も違うかもしれない。うまいところに目をつけたものだと感心する。

・人里離れたところに住むのは、どんな人だろうか。この番組の人気は先ずそこにある。田舎に住む人を紹介する人気番組は、他にも『人生の楽園』などがあって、都会人にとっては憧れの対象なのだと思う。確かに、何かやりたいことがあって、山奥に移り住んだ人もいる。そこで自力で家を作ったり、農作業をしたりする人もいる。しかし、多くは限界集落に残った一軒であることが多いし、すでに誰も住んでいない消滅集落である場合が少なくない。

・しかも、住んでいる人の多くは70代、80代で、時には90歳を超えていたりする。かつては集落にいくつもの家族が住み、学校もあったり、寺や神社、そしてもちろんお墓もあったのだが、今では老人が二人、あるいは一人で生活していたりするのである。それを見ていて思うのは、かつては山奥に住んで、生活していた人が多かったこと、そんな集落が、ほとんど消滅しかかっている現状の再認識である。農業や林業では生活できないから、そこで生まれ育った人の多くは家を離れて別の暮らしをするようになった。そして年老いた人たちも、山を下りてしまった。

・そういった事例を積み重ねていけば、これが大きな社会問題であることがはっきりする。しかしこの番組には、そんな指摘をして、番組の視点をそこに置こうという発想はない。これはあくまで娯楽番組で、おもしろおかしく、時にロマンや怖い面を見せる番組なのである。日本中いたる所に限界集落や消滅集落がある。そんな現状をくり返し見せられれば、そのうち飽きて、視聴率が下がってしまうかもしれない。そうなれば、大きな問題になどならずに、忘れられてしまうに違いない。そして山間部の集落は次々と消滅していくことになる。

・尋ねた人や住んでいる人が「やさしい」などといっている場合ではないのである。しかし、尋ねたり、訪ねた人の多くは、この番組を見ていて、過剰なほどに番組に協力している。テレビだといわれれば、どこまでも親切にする。世間体や評判を気にしてのことだろうか。他方で現状を社会問題として認識し、訴えようなどとは決してしない。日本人の特徴がよく現れた対応の仕方だとつくづく感じてしまった。最近の気候の変化で山が崩れ、川が氾濫して、山道や林道も荒廃している。杉や檜の森も、林業の停滞で荒れ果てている。この番組が教えてくれるのは、何よりそんな、日本の現状だが、番組の出演者はもちろん、登場する現地の人たちからも、そんな声は聞かれない。

・ところで、テレビ朝日は一軒家の住人や、道を尋ねた人、道案内をした人などに、出演料や謝礼を払っているのだろうか。払って当然だと思うが、さてどうだろう。無償だとしたら、それこそ丸儲けの番組だというほかはない。