- Pink Floyd "The Endless River"
・ピンク・フロイドのアルバムはほとんど持っている。ただし、もうずいぶん長い間、めったに聴くこともなかった。たまたまアマゾンで見かけたら、最後のピンク・フロイドという説明が気になって買うことにした。
・ピンク・フロイドのアルバム・デビューは1967年だが、ヒットしたのは翌年出した『神秘』(A Sauceful of
Secrets)で、それ以降「プログレッシブ・ロック」というジャンルを作り出してヒット作を連発した。2012年時点でのレコード・CDの売り上げは2億3000万枚に達している。
・僕がピンク・フロイドに興味を持ったのは70年に発表された『原子心母』(Atom Heart of Mother)からである。もう45年も経ったのかと思うが、実際によく聴いていたのは71年の『おせっかい』(Meddle)、73年の『狂気』、75年の『炎』(Wish You Are Here)、77年の『アニマルズ』(Animals)、79年の『ザ・ウォール』(The Wall)あたりまでである。
・ピンク・フロイドは、メッセージが主のフォーク・ソングや強烈なエネルギーを発散させるロックと違って、ソファーやベッドに寝転がって、瞑想状態のようにして聴く音楽を作り出した。欧米ではマリファナ等とのセットで聴かれたようだが、それなしでもドラッグ文化の一端がわかる音楽だった。
・自然や宇宙、そして人間の心をテーマにしながら、他方でテクノロジーの最先端を行く。それはまさにパソコンやネットを作り出した人たちと大きく重なる世界を作り出していた。ピンク・フロイドがもっとも精力的だった時期はまた、ジョブズに代表される「サイバー文化」の勃興期でもあったのである。
・ピンク・フロイドは1983年に発表した『ファイナル・カット』(The Final Cut)でリーダー格のロジャー・ウォーターが終結宣言をしたが、残りのメンバーがデビッド・ギルモアを中心にピンク・フロイドとして活動を続けて、裁判沙汰にもなっている。僕はそのウォーター抜きのピンク・フロイドを88年に大阪城ホールで聴いた。大きな豚がアリーナを舞う仕掛けがあって、ピンク・フロイドの世界を十分に堪能した記憶が残っている。
・ピンク・フロイドはその後も活動を続けていて何枚ものアルバムを出している。僕はもちろん、そのほとんどを持っているが、やはり印象としては薄い。ただしライブ盤はなかなかいいし、ギルモア単独のアルバムも悪くない。
・で、最後のアルバムと言われる"The Endless River"だが、新たに録音されたものではなく、2008年に死んだキーボード担当のリチャード・ライトへの追悼という意味合いがあって、彼が参加している過去の曲などを集めたもののようである。インストルメントだけの曲がほとんどで、録音された時期もまちまちのようだ。だから聴いた印象は薄いと言わざるを得ない。新しい作品と言うよりは追悼という意味合いが強いのだから、仕方がないのかもしれない。