・デヴィッド・クロスビーが死んだ。81歳だが、心臓を病んで、闘病生活をしていたようだ。彼はスーパー・スターではないし、派手な目立つミュージシャンでもなかった。けれども、僕にとってはロック音楽に興味を持つきっかけになった大事な人だった。ボブ・ディランの「ミスター・タンブリンマン」は、僕にとってギターを覚え、コピーして歌った初めての曲だが、最初に耳にしたのは、ザ・バーズのカバーだった。クロスビーはそのバンドの一員でサイド・ギターとテナー・コーラスを担当していた。リーダはロジャー・マッギンでザ・バーズはあくまで彼のバンドだった。
・1965年に結成され、いくつものヒット曲を産んだザ・バーズは68年に解散し、クロスビーはすぐに元バッファロー・スプリングフィールドのスティーブン・スティルス、元ホリーズのグラハム・ナッシュとそれぞれの名前を並べた「クロスビー・スティルス&ナッシュ」を結成した。時にニール・ヤングも参加して「CSN&Y」として活動し、”Teach
Your
Children"などのヒット曲をいくつも出している。ちなみにこの曲には中山ラビの「子供にはこう言ってやんな」と題したカバーがあって、コンサートでは必ず歌う曲だった。
・クロスビーは長年薬物中毒に冒されていて80年代から90年代にかけては目立った音楽活動はしていない。ほとんど忘れられた存在で、時折誰かのコンサートにゲスト出演すると、そのやつれた姿が哀れなほどだったが、2000年以降には復活して、息子とバンドを組んだり、スティルスやナッシュと一緒になって音楽活動をするようになった。ただし、この時期に発表された彼の作品については、僕はほとんど知らない。
・それにしても、次々と馴染みのミュージシャンが死んでゆく。日本ではもうロックやフォークは古いと思われているから、若い人たちにはまったく馴染みのない人たちだろうと思う。しかし、クロスビーは1年前までステージに出ていて、若いミュージシャンたちには敬愛されていたようだ。ネットには彼の死に際して、多くの記事があがっている。地味な存在だが、亡くなって見ると大きな人だった。僕自身のことも含めて、あらためてそう思った。
2023年1月30日月曜日
デヴィッド・クロスビーについて
2023年1月23日月曜日
寒暖差の大きい冬
・暮から寒くて天気のいい日が続いた。富士山はいつになく雪が少ない。上の写真は2日に登った裏山からの富士山である。
・お正月の御節料理はいつも通りほとんど手作りだ。伊達巻き、栗きんとん、なます、黒豆、煮物などで、栗はもちろん、山で拾ってきたものである。買ったのは蒲鉾、生ハム、イクラ、千枚漬け、数の子ぐらいだった。それに朝食はいつも通りのヨーグルトとパンにして、昼に雑煮を食べることにした。これの方がずっと合理的だが、去年までは気づかなかった。
・寒い日が続いたから、当然、薪の消費量も増えている。原木が調達できないからなるべく節約したいのだが、灯油も高いからそういうわけにも行かない。そんな心配をしていたら、急に春のような陽気になった。で、昼はストーブは休ませているが、下旬には強烈な寒波がやって来るという。ちなみに一日中燃やすと、その消費量は上のような具合だ。薪には亀虫がついていて、それを点検して家に入れるようにしている。ふつうは茶色だが、時にこんなきれいな模様もある。
・どこにも行かなくて退屈だ、ということで箱根に行くことにした。富士山の雪は風に吹かれて須走や御殿場の上に溜まる。だから箱根スカイラインから見た富士山には雪が豊富にある。そこから芦ノ湖に降り、箱根神社に参拝した。芦ノ湖にかつていたという九頭龍を祭った神社も隣接していて、平日なのにけっこうな数の参拝者だった。駅伝コースを下って小田原であんパンを買い、根府川の海岸でお弁当を食べて帰った。
2023年1月16日月曜日
新しいmacBookを買った
・何度も書いているが、僕が1989年に最初に勝ったMacはSE30で、それ以来ずっと、Macばかりを使っている。おそらく4、5年ごとに買い替えてきたから10年も使ったのは今のiMacが初めてである。熟成したということか進化の速度が鈍化したということか。もっともiMacは当時最速のものでメモリーも32MBでハードディスクも3TBもある。
・新しいMacBookProはメモリーが16MBでストレージは2TBだ。10年前のiMacよりは落としているが、もうハードな仕事はしないからこれで十分だと思った。そう言えばソフトもAdobeもマイクロソフトも買うのをやめてしまったし、必需品だったプリンターもほとんど使わなくなって、壊れたあと買っていないのである。
・例によってだが、初期設定やデーターの転送には苦労した。「移行アシスタント」を使えば簡単だろうと思ったのだが、これがあまりに遅い。12時間かかると出たから朝までつけっぱなしにしたがまだ終わらない。やっと終わったと思ったら、言語がフランス語しかない。どうしようもないからシステムを再インストールすることにした。そうすると半日かかって移行したデータがすべて消えている。もう泣けてきたが、バックアップしたハードディスクを接続させて、一つ一つデータの移行をやった。それでまた一日。
・ところで、円安のためにAppleがずいぶん値上げをした。その意味ではもっと早くに買っておけばと後悔したが、たまたま年始のセールでギフトカードがプレゼントされて、値上げされた分だけ安くなった。それにしても、パソコンはずっと研究費で買ってきたから、退職後の身としては、ずいぶん高い買い物をしたという気持ちになった。仮にこれが10年持つとして、次もまだパソコンを買う気になるだろうか。などと考えたりもした。そういう歳になったとつくづく思う。
2023年1月9日月曜日
『キネマの神様』
・『キネマの神様』は沢田研二が主演する活動屋の物語だ。ただし最初は志村けん主演の予定だったが、コロナに感染し、急死したために代役となった。撮影開始も延期になったが、映画そのものも、ラグビーのワールドカップとコロナ流行の話題から始まっている。
・主人公はアル中でギャンブル好きのダメジジイだが、かつては将来を嘱望されて映画監督になるはずだった。借金取りに追われ妻や娘に愛想つかされる現在と、若い頃に撮影現場で働く姿が代わり番こに描かれる。映画が全盛だった半世紀前の昭和の時代と現在との対比である。
・その時代には、小さな町にも映画館があって、多くの観客でにぎわっていた。しかし今は、映画館で見ようと思えば、大きな町のシネコンに出かけなければならない。その代わりに、家でいつでも見たい時に見たい映画が見られるようになった。この映画には今となっては懐かしい小さな映画館が登場する。若い頃に映写技師をしていた主役の友達が経営しているが、コロナ禍もあって閉館に追い込まれている。
・監督の山田洋次は、この作品に映画はやっぱり映画館で見るべきだと言おうとしたのかも知れない。それがコロナ禍と重なって、映画館の危機という切実な訴えのように聞こえてきた。僕はこの映画をAmazonで家のパソコンで見た。今では映画館も普通に開館されているが、コロナ禍になってから一度も映画館にはいっていないし、当分は出かけることもないだろうと思う。その意味では何とも皮肉といえるかもしれない。
・「キネマの神様」という題名は主人公が監督第一作として撮るはずだった映画の題名である。映画館に足しげく通って同じ映画を何度も見る主人公に気づいた映画の主人公が、スクリーンから客席に呼びかけて飛び出してくるといった話だった。そのシナリオに共感した孫が、映画のシナリオを公募する木戸賞(実際には城戸賞)に応募するために主人公の爺さんと書き直しをして、見事受賞することになる。
・スクリーンから登場人物が客席に飛びだすというのはウッディ・アレンの『カイロの紫のバラ』のモチーフである。映画や演劇は、それを見せるために作られるが、演じられる世界と見る世界はまったく別の世界として考えられている。二つの世界の間にコミュニケーションは起こらないのが大前提だが、ウッディ・アレンは映画の中でしばしば、その掟を破って観客を当惑させた。
・山田洋次もそのことを当然知っているだろうと思う。知っていてなぜ使ったのか。映画のラストは、主人公がかつて自分が助監督をした映画を、映画館で見ながら死ぬという場面になっている。スクリーンから主演の女優が飛び出してきて、一緒に行こうと言われてついていくのである。このシーンを撮るところから思いついたのかなどと、勝手に思ったりもした。ちなみにこの映画には原作があるが、その物語は映画とはまったく違うものである。
2023年1月2日月曜日
アメリカ製ポンコツ兵器爆買いの愚挙
・選挙時の政策にはまったくなかった防衛予算GDP比2%が決定しました。なぜ今必要なのか、何に使うのか、財源はどうするのかといった議論もないままにです。ウクライナの危機や台湾有事、あるいは北朝鮮の頻繁なミサイル発射などが理由のようです。世論調査では半数以上の人が支持しているというから驚くばかりです。しかし、日本の財政状況から見て、防衛費を倍増させるのは愚挙だと思います。さらに、仮に日本を守るためには防衛費をもっと使う必要があると考えても、その予算の使い方には、唖然とするしかありません。 ・そういう兵器は他にもたくさんあります。たとえばイージス・アショアは迎撃ミサイル発射装置ですが、秋田と山口に設置することをやめたにもかかわらず、船に乗せるとして購入されました。もちろんそのための船などありませんから、新しく作ると言うことになります。しかしイージス艦をすでに配備しているのになぜ、こんなものが必要なのかといった説明はありません。一度買うと言ったのだからやめられないとアメリカに釘を刺されているのでしょう。ちなみにこれにかかる費用もまた2000億円以上のようです。 ・戦闘機のF35はすでに27機配備されていますが、最終的には147機にする予定です。しかしこれも欠陥機として指摘されていて、すでに訓練飛行中に墜落するという事故がありました。契約時は総額6.2兆円と言われましたが、円安や値上げでもっと費用がかかるのは確実でしょう。 ・なぜ、このような兵器をアメリカから購入するのでしょう。それは防衛省からの要求ではなく、安倍元首相がアメリカの言いなりで決めたものが大半だからです。で、これらにかかる費用が現実的になって、防衛費を増額しなければならなくなったというわけです。そもそも防衛費の増額要求は安倍元首相の口から「台湾有事は日本有事」ということばにあわせて出てきたものでした。それを岸田首相は実行しているわけですが、意気地のないダメ首相ですから、アメリカに見直してくれと交渉できないのだと思います。 ・日本の政府は、経済的に落ち込むばかりなのに防衛費だけを突出させようとしています。仮想的は中国や北朝鮮でしょうが、中国は最大の貿易相手国ですから、敵対してはいけないのです。日本の食料自給率は30%台ですから、中国からの輸入が途絶えれば、途端に食料難に陥ってしまうのです。その他にも、中国製の品物をどれだけ買っているか。ちょっと考えれば、誰でも分かることなのです。それに中国の軍事力は圧倒的で、とても日本が太刀打ちできるレベルではないのです。「新しい戦前の始まり」と言うタモリのことばに、強く納得してしまいました。 |
2022年12月27日火曜日
目次 2022年
12月
26日: Sinéad O'Connor "How about I be Me (And You be You)"
19日: 矢崎泰久・和田誠『夢の砦』
12日: いつもながらの冬の始まり
5日: 円安とインバウンド
11月
21日:新聞購読やめようかな?
21日:ツーブロック禁止って何?
14日:Jackson Browne, "Downhill from Everywhere"
10月
31日:秋の恵みと冬の準備
24日: 能登半島小旅行
17日: 『MINAMATA ミナマタ』
10日: 大谷選手のMLBが終わった
3日: やめられない、とまらない!?
9月
26日: Lady Gaga "A Star Is Born"
19日: 島田雅彦『パンとサーカス』(講談社)
12日:雨ばかりの夏だった
5日:最近見た映画
8月
29日:安倍の蓋が取れて出た汚物
22日:Eric Clapton "The Lady in Balcony"
15日:国葬なんてとんでもない
8日:ビー・ウィルソン『人はこうして「食べる」を学ぶ』(原書房)
7月
25日:ニュースはネットで
18日:安倍元首相の死で見えてきた闇
11日:The Bandという名のバンド
6月
20日:庭の植物の生命力
13日:エンゼルスと大谷の浮き沈み
6日:富士山十景
5月
30日:バイデンは横田から日本に入った
23日: Neil Young "Barn"
16日:断捨離について思うこと
9日:ウクライナについての本
4月
25日:SNSは誰のものか
18日:見田宗介の仕事
11日:Stingの新譜 "The Bridge" と 'Russians'
4日:円の凋落に思う
3月
28日:北丸雄二『愛と差別と友情とLGBTQ+』 (人々舎)
21日:やっと春になった
14日:戦争報道とSNS
2月
28日:MLBが始まらない!
21日: 本間龍『東京五輪の大罪』(ちくま新書)
14日:国産品はどこへ行った?
7日:厳冬とオミクロンの中
1月
31日:メディアの劣化が止まらない
23日:マスクがパンツになった?
17日:楽曲の権利をなぜ売るのか?
2022年12月26日月曜日
Sinéad O'Connor "How about I be Me (And You be You)"
・ここでシネイド(シニード)・オコーナーを取り上げるのは12年ぶりだ。その時は"Theology"というタイトルの二枚組みだった。
"How about I be Me (And You be
You)"はその2年後に発表されていたのだが、全然気づかなかった。これよりもっと新しいアルバム"I'm Not Bossy, I'm the
Boss"も2014年に出ているが、それ以後には出ていない。
・最近の様子をネットで調べると、今年の1月に息子が自殺したとあった。その兆候は以前からあったようで、息子が家を出てから、彼女は何度もツイートしたようだ。で、その1週間後に彼女自身が自殺することをほのめかすツイートをし、思いとどまって入院をしたということだった。
・オコーナーは本当に波乱万丈の人生を送ってきた。結婚と離婚を四度くり返し、その度に四人の子どもを産んでいる。自殺したのは三度目に結婚したアイルランドを代表するミュージシャンのドーナル・ラニーとの間に生まれた三人目の子どもだった。
・ "How about I be Me (And You be You)"は10年も前に出されたアルバムだが、彼女がプライベートな生活の中で、ずっと苦悩してきたことを感じさせる歌があった。
私にそっくりの子どもを産んだ
目はあなたにも似ているが
あなたには会わせたくない
なんと説明したらいいかわからないから "I had a baby"
あなたがどこにいるのかわからない・ このアルバムは兄のジョセフ・オコーナーに捧げられている。彼はアイルランドでは著名な作家で『ダブリンUSAーアイリッシュ・アメリカの旅』が翻訳されていて、このコラムで紹介したことがある。アメリカにあるダブリンという名の街を訪ねるといった内容で、他の作品も、アイルランドという国や移民をしていったアイルランド人をテーマにしているようだ。
でも、家から遠いことだけはわかる
目が覚めると独りぼっちで、あなたはいない
家からとても遠いところに行ったんだ "Very Far From Home"
・シネイドにもアイルランドをテーマにした歌は多い。アイルランドのことを思い、カトリック教会に反撥して激しい歌を歌うが、彼女の声は今でも透き通っていて美しい。それはこのアルバムでも変わらなかった。とは言え、Wikipediaを見ると、2018年にイスラム教に改宗してシュハダ・サダカット (Shuhada' Sadaqat)と改名したとあった。激しい生き方をしている人だとつくづく感じた。
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12月 26日: Sinéad O'Connor "How about I be Me (And You be You)" 19日: 矢崎泰久・和田誠『夢の砦』 12日: いつもながらの冬の始まり 5日: 円安とインバウンド ...
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・ インターネットが始まった時に、欲しいと思ったのが翻訳ソフトだった。海外のサイトにアクセスして、面白そうな記事に接する楽しさを味わうのに、辞書片手に訳したのではまだるっこしいと感じたからだった。そこで、学科の予算で高額の翻訳ソフトを購入したのだが、ほとんど使い物にならずにが...
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・ 今年のエンジェルスは出だしから快調だった。昨年ほどというわけには行かないが、大谷もそれなりに投げ、また打った。それが5月の後半からおかしくなり14連敗ということになった。それまで機能していた勝ちパターンが崩れ、勝っていても逆転される、点を取ればそれ以上に取られる、投手が...