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2003年9月22日月曜日

オリヴァー・サックス『サックス博士の片頭痛大全』(ハヤカワ文庫)

ここ数年、頭痛に悩まされている。といっても「頭痛の種」といった比喩の話ではない。正真正銘の頭痛だ。原因の一つは車による通勤。家のある河口湖は海抜800mで大学はたぶん数十メートル。この高低差にいつまでたっても順応できなくて困っている。耳がつまり、頭が重くなる。仕事をしているあいだはあまり気にならないが、家に帰ると目の奥やこめかみが痛い。もちろん、大学でくたびれることも、往復3時間のドライブで目が疲れることも原因だろう。


とは言え、ぐっすり眠れば翌朝にはすっきりしてしまうから、別に薬も飲まないし、病院にも行っていない。子どもの頃は車酔いをよくしていたし、今でも飛行機に乗ればかならず耳が痛くなる。老眼がはじまって読書がつらくなったし、酒を飲んでも頭が痛くなるから、これはもう年齢や体質だとあきらめるしかないのだが、それでも何とか対処法を見つけたい。そんなふうに思っていたら、気になる本があった。
オリヴァー・サックスの書いた『サックス博士の片頭痛大全』。彼は『妻を帽子と間違えた男』や『レナードの朝』などの著書がある脳神経科医だ。『レナードの朝』は映画になっていてロバート・デニーロがレナードになり、医者はロビン・ウィリアムズだった。ドラマチックに描いた映画とは違って、原作は症例の詳細な報告で、これはこれでなかなかおもしろい。


『偏頭痛大全』も多数のさまざまな症例が登場する。それを読むと僕の頭痛などは大したことのないかわいいものだと思えるほどだ。しかしもっと驚くのは、頭痛はずっと病気としてあつかわれてこなかったという文章でこの本がはじまっていることだ。「一般的には、片頭痛は傷害を引きおこさない頭痛の一形態であり、忙しい医師の手を他の疾患よりもよけいに煩わせるものとみなされている。」片頭痛の記述は2000年前から存在するにもかかわらず、ロンドンの病院で片頭痛の治療がはじまったのは1970年になってからだそうで、この悩ましい頭痛に医学はほとんど注意を払ってこなかったというのだ。

片頭痛性の頭痛が起こる場所は特にこめかみ、眼窩の上部、前頭部、眼球の後部、頭頂部、耳介の後部、そして後頭部である。
確かにそうだ。こめかみ、目の奥、頭頂部、そして後頭部。僕は胃や十二指腸にも持病をかかえていて、時折、きりきり痛むことがある。頭痛との関連はないと思っているのだが、本には「胃痛型片頭痛」といった症状も紹介されているから、ひょっとしたら関係しているのかもしれない。病気についての本というのは、読めば読むほど気になるものだが、次のような文章にはかなり納得した。
とくに負けん気が強くてしつこい性格の患者は、片頭痛に譲歩しない。したがって普通の患者は、重い通常型片頭痛を起こすと気力を失い、休息をとりたがるのであるが、こうした患者は無理に仕事や生活を普段どおり続けることになる。
頭が痛くなったら、何も考えず、仕事もせず、眠るにかぎるということだ。たとえばぼくは原稿の締切に追われてイライラするという状況にはとても耐えられない。胃がきりきり痛んでくるし、頭も痛くなる。若い頃に何度も懲りているから、仕事は早め、早めに片づける習慣が身についている。しかし、イライラする原因はもちろん、自分のことばかりでなく他人にも関係する。こちらが期待するとおりに仕事をしない、勉強をしない、気が利かない。そういう人に対するイライラは、直接怒ったからといっておさまるものではない。だからどうしても、人にはたよらず、できることは自分でやってしまうことになる。自分で肩代わりできないものについては、自分のことではないと突き放すしかないのだが、そういう輩にかぎって、たよってくるから始末がわるい。


『偏頭痛大全』の最後には片頭痛の治療や薬についての記述もある。疲れたら眠ること、イライラしないこととあたりまえだが、薬のなかにカフェインがあって、珈琲や紅茶を多めに飲みなさいと書いてあった。もう全部やってることで、病院に行って医師の判断を仰ぐ気もないし、市販の薬など飲みたくないから、さほど役にはたたなかったが、世の中にはさまざまな頭痛の症状があるものだと今さらながらに感心してしまった。

2003年12月30日火曜日

目次 2003年

12月

30日:目次

22日:クロード・レヴィ=ストロース/中沢新一『サンタクロースの秘密』(せりか書房)

15日:昇仙峡周辺

8日:日本テレビとテレビ東京

1日:ジャンク・メールの山

11月

24日:久しぶりのコンサート Neil Young(武道館)

17日:同じ頃に同じ発想をした人がいた

10日:紅葉のにぎわい

3日:キャロリン・マーヴィン『古いメディアが新しかった時

10月

27日:ジョニー・デップの映画

20日:「ポピュラー文化論を学ぶ人のために」への手紙

13日:Neil Young "Are You Passionate?"

6日:野茂のMLB

9月

29日:おかしな天気

22日:オリヴァー・サックス『サックス博士の偏頭痛大全』

15日:ナチとユダヤの物語

8日:バイクとお別れ

1日:Lou Reed "the Raven"

8月

25日:夏は来なかった

18日:スーエレン・ホイ『清潔文化の誕生』

11日:読書の衰退

4日:山形までドライブ

7月

28日:フィールド・オブ・ドリーム

21日:Madonna "American Life"

14日:雑草のたくましさ

7日:ロジャー・シルバーストーン『なぜメディア研究か』

6月

30日:カメラ付き携帯のいかがわしさ

23日:料理とリフォーム

16日:"Bob Dylan Live 1975"

9日:アメリカの20世紀(上下)

2日:もう、梅雨のよう

5月

26日:なぜか懐メロ

19日:相変わらずのジャンク・メール

12日:不況と少子化の影響

5日:「ファイナル・カット」

4月

28日:病気と病

21日:春になったから

14日:Juchrera"Herveit"

7日:ドイツからの便り

3月

31日:久しぶりの京都

24日:やれやれ、今度は松井か

17日:心と肉体の関係について

10日:忘れた頃の大雪、さあ、除雪機だ!!

3日:Steave Earle "Jerusalem"

2月

24日:TVの50年

17日:ETCに変えた

10日:ネットで買い物

3日:また雪か

1月

27日:声とことばと歌、音楽

20日:パトリシア・ウォレス『インターネットの心理学』

13日:たそがれ清兵衛

6日:今年の卒論

1日:Happy New Year!

1997年9月15日月曜日

『NIXON』オリヴァー・ストーン(監) アンソニー・ホプキンス(主)

  • ニクソンは、ぼくにとってはもっとも嫌なアメリカ大統領という印象が強かった。J.F.ケネディの敵役だったし、大統領になれたのは、JFKや弟のロバートが暗殺されたおかげだった。大統領になると、北爆やカンボジア侵攻で、ヴェトナム戦争を一層の泥沼状態にしたし、学生運動を強硬に取り締まった。そして最後は、ウォーターゲート事件。要するに、反共主義者で狡猾で汚い政治家だった。ちょうど時期的にも重なった、日本の田中角栄と共通点があったようだ。貧しい家庭に育ち、苦学して政治家になった。で、二人とも続いて中国と国交を回復させた。ただ、田中角栄は庶民派の政治家として、かなりの人気を得ていたから、暗い悪役のイメージのニクソンとは。ずいぶん違うという気もしていた。
  • ところが、そんなニクソンに対する印象は、1976年に発行されたE.ゴフマンの"Gender Advertisement"という本を見てすっかり変わってしまった。この本は新聞や雑誌の広告、あるいは記事の中で使われた写真を材料にして、主に男らしさや女らしさを表情やしぐさ、あるいはポーズといった点から分析したものである。ゴフマンがこの本に使った素材は、人が自覚してする行動ではない。ほとんど意図せず、また写真に撮られていることも気にせず写された一コマ。そこに、無意識のうちに現れる、習慣的な行動や、その時々の正直な胸の裡がよく読みとれる。そこから、社会的に身についた性の違いを読み解こうというのがこの本の狙いだった。
  • ニクソンはこの本の中で、はにかみ笑いや、ぶすっとした不機嫌な顔、娘の結婚式での照れ笑いなど、ずいぶんおもしろい一面を登場させている。ぼくはこれを見たときに、本当はずいぶん正直な人なのだな、と思った。彼がJ.F.ケネディと大統領選を争った時の敗北の最大の原因はテレビ討論会での印象の悪さだったと言われている。テレビでは、何を話したかではなくて、どう映ったかが強い意味あいをもつ。メッセージではなくてメディアの特質。真善美を兼ね備えたケネディと偽悪醜をさらけ出したニクソン。M.マクルーハンのこんな主張を納得させるのに、これほどいい材料はなかった。しかし、そうであれば、ニクソンの失敗の原因は彼の人格にではなく、印象操作のまずさに求められるはずだが、一般にはそうは理解されなかった。
  • この映画に登場するニクソンも、喜怒哀楽を素直に出す人物として描かれている。非常に強くて厳格な母親を聖女として慕い、また忠実な犬になると誓って恐れる。そんな母親のイメージが彼の妻にもダブる。家柄も学歴も格好の良さも比較にならないケネディに嫉妬し、恐れ、逆にそれへの反発心を政治家としてのエネルギーにする。ケネディとは違う現実を見据えた政治家。けれども、世論はそんな彼を最後まで支持しなかった。
  • 悪者のイメージをまとい、嫌われたままで大統領になった男。ヴェトナム戦争はケネディによってはじめられた。それが泥沼化して誰もがやめろと言いはじめた。しかし、アメリカにとっては敗北による幕引きはできない。映画の中のニクソンは、その名誉ある終結に至るシナリオを考えあぐねて苛立つ。それは、いわば、ケネディの尻拭いである。中国との国交も回復させたニクソンには再選に向けた大統領選挙の見通しは暗くはなかった。民主党の対抗馬は草の根民主主義をかかげ若者の支持を基盤にしたマクガバンだった。決して強力な対抗馬ではない。けれども、ニクソンは選挙に向けて、いろいろ策略をめぐらせた。選挙には大勝したが、その策略がウォーターゲート事件として発覚し、任期途中での辞任に追い込まれることになる。
  • 権力欲に取り憑かれた正直で、不器用で、小心な男の悲劇。ニクソンが大統領としてした仕事は、今まで思っていたほど悪いことばかりでなかったのでは。この映画を見て、あらためてそんなことを考えた。
  • 1997年12月31日水曜日

    目次 1997年

    12月

    30日:目次

    25日:山崎

    8日:テレビ批評はいかにしたら可能か?

    2日:やっと見つけた!!

    11月

    24日:Patti Smith "peace and noise"

    17日: 中野不二男『メモの技術 パソコンで知的生産』(新潮選書)

    11日:永沢光雄『風俗の人たち』筑摩書房,『AV女優』ビレッジセンター

    11日:京都の秋

    10日:ホームページ公開1年

    3日:B.バーグマン、R.ホーン『実験的ポップミュージックの軌跡』勁草書房

    10月

    26日:A.リード『大航海時代の東南アジアI』

    20日:『デッド・マン・ウォーキング』

    12日:"Kerouac kicks joy darkness"

    1日:ジョン・フィスク『テレビジョン・カルチャー』(梓出版社)

    9月

    15日:『NIXON』オリヴァー・ストーン(監) アンソニー・ホプキンス(主)

    8日:Brian Eno "The Drop"

    3日:高校野球について

    8月

    26日:ぼくの夏休み 白川郷、五箇山

    17日:ミッシェル・シオン『映画にとって音とは何か』(勁草書房)

    5日:The Wall Flowers "Bringing Down The Horse"

    3日:トレイン・スポッティング』

    7月

    22日:富田・岡田・高広他『ポケベル・ケータイ主義!!』(ジャスト・システム)

    15日:大学生とメール

    8日:Neil Young "Broken Arrow""Dead Man"

    5日:リービング・ラスベガス』マイク・フィッギス(監)ニコラス・ケイジ(主)

    1日:ガンバレ野茂!!

    6月

    23日:『ブルー・イン・ザ・フェイス』 ポール・オースター、ウェイン・ウォン

    16日: 津野海太郎『本はどのように消えてゆくのか』(晶文社),中西秀彦『印刷はどこへ行くのか』(晶文社)

    10日:学生の論文が読みたい!!

    7日:『恋人までの距離』Before Sunrise、『Picture Bride』

    5月

    31日:Van Morrison "The Healing Game"

    27日: ジョゼフ・ランザ『エレベーター・ミュージック』(白水社)

    25日:「矢谷さんと中嶋さん」

    20日:『デカローグ1-10』クシシュトフ・キェシロフスキ

    7日:連休中に見た映画

    4月

    30日:Tom Waits "Big Time""Bone Machine""Nighthawks at the Dinner"

    25日:村上春樹『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』(岩波書店)『アンダーグラウンド』(講談社)

    3月

    30日:Bruce Springsteen "the ghost of tom joad",U2 "Pop"

    30日:「容さんを偲ぶ会」(東京吉祥寺クークーにて)

    15日:『ファイル・アンダーポピュラー』クリス・トラー(水声社)ほか

    10日:Beck "One Foot in the Grave",The Smashing Pumpkins "Mellon Collie and the Infinite Sadness"

    10日:ミネソタから舞い込んだメール

    8日:容さんが死んだ

    4日:知人の病気

    1日:『女優ミア・ファロー スキャンダラス・ライフ』

    2月

    26日:Marianne Faithfull(バナナ・ホール、97/2/25)

    25日:加藤典洋『言語表現法講義』(岩波書店)

    20日:Bob Dylan(大阪フェスティバル・ホール、97/2/17)

    日:

    1月

    31日:室謙二『インターネット生活術』(晶文社)クリフォード・ストール『インターネットはからっぽの洞窟』(草思社)

    15日:Patti Smith(大阪厚生年金ホール、97/1/14)